記帳代行をやらない理由
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自分のことを「自分ごと」として捉えて頂きたいので
当事務所では、記帳代行を請け負わないこととしています。その理由は、単に「税理士・公認会計士のひとり事務所だからマンパワーが無く引き受けられない」ということではありません。たとえスタッフを雇用したとしても、記帳代行は引き受けないこととしています。
その最大の理由は、自分のことを「自分ごと」として、捉えていただきたいからです。
会社であれば、経営者にとっても従業員にとっても自社のことは自分ごととして捉えていただきたい。
個人事業主やフリーランスであれば、まさしく自分のことは自分ごととして捉えていただきたい、と考えております。
自計化せず記帳代行をすると、自社で記帳をしない、自分で記帳をしないことから、お金の出入りについての記憶やら印象が、曖昧になります。
(自計化とは、自社で(自身で)記帳することをいいます)
お金の出入りについての記憶やら印象が曖昧になると経営判断を誤りやすくなり、経営がうまくいかなくなりやすい、というのは容易に想像できることではないでしょうか?
自分で記帳(会計ソフトへの入力)をすると、お金の出入りについての記憶やら印象が、定着しやすいです。記帳というのは確定申告のためにすると思われがちですが、確定申告は記帳の目的の一部に過ぎません。記帳の目的はお金の管理のためであり、経営のためです。
経営の結果は、お金の出入りであり、その結果手元の現金預金(キャッシュ)がいくら増えたか、あるいは減ったかに現れます。それを自分ごととして考えられないというのは、なんか変です。
現実では、自分のことなのに他人事みたいに捉えてしまうことは多々あります。健康問題が典型例で、医者の説明をよく聞いて理解しなかったり、医者の指示を守らないことが該当します。
病気は医者が治すものではありません。医者に相談しつつ、専門的判断と指示を得て、それを守る(処方された通りに服薬する、定期的検査を受ける、通院を指示されたら通院するなど)ことにより、自分で治すものです。
自社のことなのに、社外の人間である税理士に聞かないと分からないということも少なからずありますが、会計や税務の専門的な判断を要する事項ですら、判断を得た後は、自社のこととして腹落ちしていただきたいというのが本音です(会計士や税理士と企業との関係は、医師と患者の関係にとてもよく似ています)。
DIYのスピリットはモノづくりだけではなく、会計にも当てはまる
DIYが文化として浸透して久しいですが、DIYは、日曜大工として家具を作ったり、家の修繕をしたり、クラフト雑貨を作ることだけではありません。
2022年1月の今の感覚では、ホームページを作ったり、スマホの設定をしたりオートメーションをつくったりするのもDIYの範疇に入ります。つまり工作やクラフトの分野だけではなくITもDIYの範疇に入りました。
だとすれば、ITを使うことがもはや必須の記帳(会計ソフトを使うことがもはや必須ですね。肌感覚として、今や税務申告も電子申告が普通になってきていますから)も、DIYの範疇に入るといえます。
家の修繕やリノベーションをDIYするのはとてもクールでかっこいいですが、記帳もまた一般的にそう見えてほしいですし、私は記帳代行をしないで自計化、記帳をDIYされている経営者や事業主をクールだと思っています。
記帳という作業は、10年後には無くなる可能性が極めて高いため
2022年1月の今でも、クラウド会計の同期機能の充実により、記帳作業の負担は10年前より相当軽くなった
クラウド会計が初めて日本に登場したのは2013年(freee)でした。
10年前、2012年の今頃は、クレジットカードやネットバンキングの入出金データは、紙に印刷されたものを会計ソフトに手でキーボードを叩いて入力したり、CSVに落としたデータをスタンドアロンのPCの会計ソフトに取り入れたり(つまり、ネットバンキングデータのエクスポートとインポート)して記帳していました。
クラウド会計が一般化しつつある今、ネットバンキングデータもクレジットカードデータも、同期機能により直接クラウド会計に取り入れることができ、手書きや、エクスポートとインポートを繰り返す作業がだいぶ軽減されてきました。
今後、ますます記帳という単純作業は減っていき、10年後、2032年には無くなるか、残ったとしてもほんの僅かになることは、容易に想像がつくのではないでしょうか?
だとすれば、やがて無くなる仕事に時間を取られるのは、時間の浪費です。
やがて無くなる仕事への時間は減らし、その分を、今後増える、あるいは今後新たに生じると予想される仕事や、勉強に費やすべきです。
もっというと、記帳はせず、その浮いた時間に、新しいことに触れたりチャレンジしたりするべきです。
時代も社会も凄まじいスピードで変わっていっています。コンビニエンスストアの無人化は分かりやすい例で、私は2025年には日本のすべてのコンビニが無人化すると思っていますが、あと3年、3年というのは案外早くやってきます。
3年後のスタンダートを今この瞬間から実践すべきです。
記帳という作業をしないことにより、その時間をより創造性の高い仕事に集中するため
個人的印象ながら、今は、私が学生時代だった1992年〜1996年に比べると、大手企業や有名企業への志向が薄れ、個人として(インフルエンサーとして)社会に貢献したいとか、自ら起業して新しい価値を世界に提供したいという志向が増したように感じられます。
そう。2022年1月の時点で、大企業よりも、個人や小規模企業の影響力の方が大きくなっています。いわゆる「スモールジャイアンツ」です。
記帳は往々にして単純な作業で、単純作業には快楽を伴うこともあるのですが、単純作業の繰り返しは、創造性につながりません。というか、単純作業ばかりだと、やがて飽きてしまいます。
単純作業を減らして、より面白みの強い、自分も周りもワクワクするような、そのようなクリエイティビティあふれる仕事にお互い集中し、個人や小規模起業として社会にいい影響力を与えていくためにも、記帳や記帳代行は減らしたいものです。
会計事務所として記帳代行を請け負わない。自計化する場合には、記帳の作業量と作業時間を極小化できるような提案を継続的にしていくという姿勢で、税理士・公認会計士として仕事に取り組んでまいります。