会計税務DIYの道〜個人事業主・フリーランス向け<その4>

会計税務を勉強しよう!お金の流れと社会の仕組みがくっきり分かる!

勉強しましょう!

われわれ公認会計士や税理士は、日夜勉強に勉強を重ねて、墓場に入ってもなお勉強の意識を持って、高いプロ意識を持って実務能力をブラッシュアップし続けています。

しかしながら、勉強に勉強を重ねるというのは、専門家の専売特許ではありません。みんなにとって必要です。もちろん、専門家並みの勉強量が求められるという訳ではありませんが、専門家が素人向けに噛み砕いて話す内容くらいは理解する程度の勉強は求められます。

会計や税務を「全く勉強しないで」経営をするというのは、泳げない状態で大海に放り出されるに等しいです。大海を泳ぐためには泳ぎ方を勉強(練習)しなければなりません。経営をして企業を維持発展させるには、会計や税務の勉強は避けて通れません。

確定申告してみて、計算の結果出てきた利益を見ては「儲かったなあー」「ぼちぼちだったなー」「赤字になっちゃったなー」と思い、貸借対照表を見ては「現金が増えた」「借り入れが増えた」などと振り返り、税金の額を見ては「税金高いなー」「何でこんなに取られるの??」と思ったりします。

会計税務を勉強すると、単に結果だけ見て一喜一憂するのではなく、何で儲かったり赤字になったりするのか、何で資産が増えたり負債が増えたりするのか、何で税金がこんなに高いのか、といった「何で」の部分がよく分かるようになります。

「何で」の部分がよく分かるようになると、それを改善する案も出やすい、改善に向けてのアクションを起こしやすくなるといえます。「何で」の部分がよくわからないと、立ち往生するばかりです。

さらに、税金は、税金の種類によって、納める先も違ってきます。国に所得税、消費税。都道府県に地方消費税、都道府県民税と事業税。市町村に市町村民税と固定資産税(償却資産税)。それぞれ納めますが、税金の種類と納める先をはっきり意識すると、税金を使って仕事をする国政や地方自治への関心が強まっていきます。

税金を使って仕事をし、税金を原資とする給与を貰う国会議員や地方議員、国家公務員や地方公務員の仕事ぶりがどうか、より気になってしまいます。

勉強をし続けると、お金の流れも社会の仕組みも、一層見える、分かるようになっていきます。勉強にデメリットなし、メリットづくしといってもいいです。

(2月18日・読売ランド前駅近くの「カフェ・ド・シュロ」にて、堺屋太一「平成三十年(下)」を読みながら)

さて、確定申告とその後について解説をしていきます。

所得税及び復興特別所得税の確定申告

1月から12月までの1年間に獲得した「所得」に対して、税率を乗じて、納めるべき税金を計算します。「所得」は全部で10種類あり、そのうちの「事業所得」が、個人事業主やフリーランスの事業で得た所得(利益)となります。

他にも、土地、建物、マンションなどの賃貸料から諸経費を引いた残りは「不動産所得」

会社員、パート、アルバイトの給料は「給与所得」、退職金には「退職所得」

土地や建物(不動産)や株式やゴルフ会員権などを売却すれば「譲渡所得」、

株式の配当は「配当所得」、預貯金の利子には「利子所得」

一括払いの生命保険など「一時所得」、林業の「山林所得」公的年金その他の所得「雑所得」です。

ここでは詳述しませんが、所得の種類によって、合算したり、あるいは合算せずに税率を乗じて計算したり。

合算した所得を「総所得金額」と呼びますが、総所得金額から「所得控除額」(基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除、生命保険料控除など全部で14種類)を引いて課税される所得金額を算出、これに税率を乗じて税額を出します。

ところで、何故「確定」申告かというと、最終的に納めるべき税額を「確定」するからです。確定申告に至るまでの一年間には、予定納税をしたり、源泉徴収されたりと、税金の前払いが求められてしまいます。確定申告書を作成する過程で一年間の所得に対する税額を確定させ、そこから予定納税の額と源泉徴収された額を差し引いて、最終的に納めるべき(あるいは前払いのしすぎであったため、還付されるべき)税額を求めるわけです。

消費税及び地方消費税の確定申告

消費税のかかる売上高(課税売上高といいます)が1,000万円を越えると、その超えた年(「基準期間」といいます)の次の次の年(2年後)において、消費税及び地方消費税を計算して、申告と納付をしなければなりません。

基準期間の次の年には、消費税を申告と納付の義務は無いこととなりますが(今回の説明においては単純化のため「特定期間」は考慮しない)、その間に、翌年の消費税の課税方式をどうするか、シミュレーションをしながら検討するわけです。

消費税の課税方式には「本則(原則)課税」と「簡易課税」があります(ただし、簡易課税は基準期間の課税売上高5,000万円超の場合は使えなくなります)。どちらが有利か、シミュレーションするわけです。

「本則課税」では、売上で預かった消費税と仕入れ(購買)で取引先に支払った消費税をそれぞれ集計して、差し引きした金額を納めることになります(大雑把にいえば)

「簡易課税」では、売上で預かった消費税のみ集計し、その預かった消費税を業種ごとに分けて集計、業種ごとの「みなし仕入率」を乗じて仕入れで支払った消費税とみなし預かった消費税から差し引くという計算方法です。仕入れで支払った消費税の集計はしないものの、複数業種にわたる事業をしている場合の業種分けが多少手間です。

「簡易課税」にするためには税務署に届け出をする必要があります。「消費税簡易課税制度選択届出書」を、適用しようとする年の開始日の前日(12月31日)までに提出する必要があります。

さらに「簡易課税」は適用してから2年間はやめられません。また、やめるにあたっても税務署への届け出(「簡易課税制度選択不適用届出書」)が必要で、届け出をしない限りずーっと「簡易課税」になってしまいます。

そして、「簡易課税」では消費税の還付を受けられません。多額の設備投資などをすると、仕入れ(消費税の世界では設備投資も「仕入れ」と呼ばれます)で払った消費税が増え、売上で預かった消費税を越える場合がありますが、本則課税では超えた部分の還付を受けられます。将来の設備投資計画を考慮して、本則課税にするか簡易課税にするかを決める必要があります。

税務調査への対応

さて、確定申告を済ませると、終わったーという気分になります。実際確定申告というのは一つの大きな山で、区切りで、終わった感はあります。

しかしながら、後日に、税務署が事務所や店舗に税務調査に来ることがあります。

税務調査では、帳簿や証憑(領収書、請求書、契約書、通帳など帳簿作成の元資料であり取引の根拠となる資料)を調査される上、経営を含めて、質問されます(国は「質問検査権」を持っています)。

国の機関である税務署では、他の行政機関と連携しながら様々なデータを収集し、データ間の整合性などに基づいて、課税漏れがないかどうかを調べています。課税漏れの可能性が本当に無いのか、あるいは課税されるべき事象があるのではないか、企業に赴いて実地調査をするわけです。

確定申告や決算書の元となる帳簿と証憑は、税務調査に備えて、ばかりでなく、決算書の論拠を明確にするため、整然と揃えておかなければなりません。

帳簿と証憑は、確定申告期限から7年間(一部、5年間で良いものもある)保存しなければならないこととなっています。

終わりに

4回にわたって、ざっくりと、個人事業主とフリーランスにとっての会計税務上のやることをまとめてみました。実にやることが多いです。やることが多いのですが、勉強して理解するとともに、やり方を工夫して、効率化を図る余地も大きいものです。

私自身、より分かりやすい説明能力を磨き、効率的な生産性の高い会計税務の実務を研究し、皆様の会計税務の勉強と、実務のお役に立ちたいと存じます。

(本投稿の執筆時間 90分)

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