会計税務DIYの道〜個人事業主・フリーランス向け<その3>
人間はみな商売人であり経営者になることが求められるのが資本主義社会。だからDIY。
日本を含め、資本主義の世界では本質的に人間はみな、商売人に、経営者になることが求められます。会社員や公務員であっても、会社や官公庁に「才能と技術と時間を」「販売する」と考える以上、同じことです。商売人に、経営者にならないと、資本主義社会では生きられません。
商業高校では簿記を勉強すると思いますが、そうでない限りは、会計学も税法も、大学で履修しなければ、必要に迫られるまで勉強する機会ってないですよね。
ビジネスのやり方にしても、大学で商学部や経営学部に行かない限りは、あるいはビジネススクールに行かない限りは、勉強する機会がなかなか無く、必要に迫られるまで勉強する機会がない。
日本では下手をすると、商売人、経営者になるための勉強をしないまま、商売人や経営者の道を進むことになってしまう。幼児教育の時点から、ゲームの要素を取り入れながら、ビジネスに必要な知識や技術を身につけられればいいのにと考えてしまいます。
誰でも、市場と、社会と渡り合うならば、営業だけできても不十分だし、製造だけできても不十分だし、経理だけできても不十分。パンでもパスタでもコーヒービバレッジでも、美味しく薫り高くつくれるというだけでは、雑貨や衣服でもおしゃれにつくれるというだけでは、独立してもどこかで上手く行かなくなるでしょう。売り方を知って実践しなければならないし、税金の計算も、資金繰りも、できなければならないからです。
規模はどんなに小さくとも、やることは上場企業の社長と同じ。
営業も技術も研究開発も製造も経理も財務も、相応の実務知識と実践が求められるのではないでしょうか。その上での決断力と行動力が求められるといえます。
できなければ、できる人に丸投げすればいいと考える人もいるでしょうが、丸投げばかりしていると、商売人にも経営者にもなれません。
自分の店のカネの状態つまり、財務の状態も損益も資金繰りも分からないというのは、商売や経営ができないことに繋がっていきます。税金の計算しかり。先々納税しなければならない額をうまく予想できなければ、税金を納められず資金繰りに窮します。
営業の外注でも、自分が望むような顧客を獲得できるとは限らないでしょうし、自分の提供するサービスや製商品のビジョンやポリシー、世界観を理解した上での営業方法をとってくれるとは限らないでしょう。
やはり、営業でも製造でも経理、財務でも、自分で勉強して実践する必要があります。DIY。そうしなければ経営は、商売はできません。
(新百合ヶ丘 カフェ・ベローチェにて)
「1月トリオ」と呼ばれる税務手続
今回は1月にやらなければならない3つの税務手続き、1月トリオ、などと呼ぶ人もいますが、書いていきます。
源泉徴収票と給与支払報告書
源泉徴収票は、従業員にとっての税務書類。支払った給与を受け取っている従業員に交付するものです。年末調整後速やかに従業員に交付しなければなりません。従業員が従業員自らの確定申告をする際に、確定申告書に添付して税務署に提出するものです。一定金額以上の給与額の者については、税務署にも1月末日までに提出しなければなりません。
給与支払報告書は、個人別明細書と総括表で構成され、給与の受取人の住所地の市区町村に提出します。各市区町村で給与の受取人の住民税額を計算するのに使われます。提出期限は1月末日です。
給与支払報告書の個人別明細書は、源泉徴収票の複写になっていて、書く内容は源泉徴収票とほぼ同じです。
給与支払報告書の総括表は、市区町村ごとに作成し、提出者の基本情報、給与の受取人の総数、その総数のうちその市区町村に在住する者の人数、特別徴収(天引き。こちらが原則)と普通徴収(天引きすることなく給与の受取人が自分で納める)の人数を記入します。
法定調書(支払調書)
前述した源泉徴収票も法定調書の一種ですが、ここではその他の法定調書について述べます。
そもそも法定調書とは、税務署が納税者の所得を把握するために、報酬などの支払者に提出を求めるものです。
ここでは、税理士や弁護士などに報酬を支払った際に提出を求められる「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」について触れますが、
- 支払者の住所氏名、マイナンバー等の基本情報
- 支払いを受けた者の住所氏名、マイナンバー等の基本情報、
- 1年間に支払った報酬の総額
- 源泉徴収税額
を記入します。提出期限は1月末日です。
支払を受けた者(弁護士や税理士など)のマイナンバーを把握しなければならないというのが、手間です。
従業員についても給与支払報告書や源泉徴収票に記載するため、マイナンバーを必要としますが、従業員の場合、雇用という継続的な関係性から、マイナンバーを提供してもらいやすいといえます。これに対し、スポット的な契約であっても、報酬を支払った以上は、弁護士や税理士のマイナンバーを求める必要が生じてしまいます。現状、必要性を理解してもらって、提供してもらうしかありません。
さらに、マイナンバーの情報が漏洩しないよう(役職上マイナンバーを取り扱わない従業員の目に触れないように)、その管理は、鍵付き書庫や引き出しに保管するなど、厳重にする必要があります。
償却資産申告書
償却資産申告書は、申告の対象となる償却資産(事業用の、一個または一組が10万円以上で耐用年数1年以上の有形減価償却資産で、一括償却資産の対象としなかったもの。建物附属設備(事務所や店舗を借りている場合の内装工事など)、構築物、機械装置、工具器具備品など)の所在する市区町村に提出します。なお、自動車税の対象となる自動車、軽自動車税の対象となる軽自動車税は除かれます。
固定資産税の一種である償却資産税を市区町村が計算するために使われます(計算の結果、市区町村から納税通知書と納付書が送られてくる)。償却資産は事業によってお金を生み出すことから、税金の負担能力がある、という考え方で課税されます。
各償却資産の名称、種類、取得年月、取得価額、耐用年数を記載する「種類別明細書」と、資産の種類別に取得価額を合計し、期中増減を、提出者の基本情報とともに記載した「償却資産申告書」で構成されます。提出期限は1月末日です。
次回は・・・
一年の締めである確定申告と、その後のことについて解説していきます。
(本投稿の執筆時間 120分。書き方とか、何を削るかとか残すのとかに時間がかかってしまいました。)