乗り物の酔い止め薬は医療費控除できるか?
酔い止め薬は「医薬品」だから、医療費控除できるのでは?
ドラッグストアで購入した酔い止め薬のパッケージには「第2類医薬品」と明記されています(下の写真)。
医薬品であるため、ドラッグストアで買ったときの領収書(レシート)を(確定申告期限(2023年分は2024/3/15)から5年間)保存することにより、医療費控除できそうな気がしますが、本当にできるのでしょうか?
以下にて検討します。
酔い止め薬は、医療費控除できない。
酔い止め薬は医療費控除できません。
その理由は、酔い止め薬は、乗り物酔いを予防するための薬であって、治療するための薬ではないとされるためです。
論拠1:所得税基本通達
国税庁HPで公開されている「所得税基本通達」には、以下の通り記されています。下線付き太字に注目です。
73-5 令第207条第2号に規定する医薬品とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第1項《医薬品の定義》に規定する医薬品をいうのであるが、同項に規定する医薬品に該当するものであっても、疾病の予防又は健康増進のために供されるものの購入の対価は、医療費に該当しないことに留意する。
国税庁HP「所得税基本通達」
医薬品であっても、疾病の予防のために用いられるものは、医療費に該当しないと言っています。
論拠2:所得税法及び所得税法施行令
所得税について規定している法律である所得税法と、所得税法を受けてその範囲内で詳細な規定をしている所得税法施行令において、医療費控除の対象となる医薬品は、次のように定義されています。
所得税法73条2項 前項に規定する医療費とは、医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるものとして政令で定めるものをいう。
e-Gov法令検索「所得税法」
所得税法施行令207条 法第七十三条第二項(医療費控除)に規定する政令で定める対価は、次に掲げるものの対価のうち、その病状その他財務省令で定める状況に応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とする。
(中略)
二 治療又は療養に必要な医薬品の購入
(以下略)
e-Gov法令検索「所得税法施行令」
ポイントは、「治療または療養に必要な」という点にあります。
酔い止め薬は、まだ症状が出ていないうちに、乗り物酔いという症状が出ないよう予防する目的で服用されるものであり、乗り物酔いになってからそれを治療または療養するために服用されるものではないために、医薬品であっても医療費控除の対象とはならないわけです。
(なお、法律は国会で制定され、施行令(政令という)は法律の規定を前提にその枠内で内閣が制定します)
まとめ
酔い止め薬は医薬品であっても、医療費控除の対象とはなりません。
さて、医療費控除の対象になるのではないか?と思われる支出は、かなり幅広く多岐にわたります。
病院や診療所などで直接医師に治療してもらった治療費のように、簡単に判断できるものもありますが、簡単には分からないもの、紛らわしいものも少なくありません。税務署に問い合わせる(署の確定申告コーナーで税務署の職員に聞いてみたり、税務署に電話するなど)、税理士等の専門家に相談するなどして対応しましょう。
なお、今回の酔い止め薬の投稿は一般論であり、具体的な判断は、個別の状況をも考慮に入れて総合的に判断する必要がありますので、個別に税理士等の専門家に相談されることをお勧めいたします。
もっとも、私見ですが、個別の状況を考慮に入れても、酔い止め薬は医療費控除の対象としては認められない可能性が高いと思われます。