法人を設立するか?あるいは個人事業でいくか?
(昨日は鎌倉芸術館で税理士会の研修を受けてきました)
社会保険料の負担をメリットと感じるかデメリットと感じるか
昨日受けた税理士会の研修の冒頭で、最近「個人成り」が増加していると聞きました。
株式会社などの法人は、雇用している従業員の数にかかわらず社会保険への加入が強制されるため、社会保険料の負担があります(法人と従業員で折半する)。その社会保険制度の運用が厳しくなっていて、保険料の滞納があると、納付されるまで頻繁に催促されるようになっているとのこと。社会保険料の負担の大きさに耐えられない(特に従業員4名以下の)法人が、社会保険料の負担をしないで済むよう、個人成りしているというのです。
ちなみに、昨日の研修は「会社解散・精算の実務」、個人成りするか廃業するか、目的はさまざまですが、とにかく「会社をたたむ」実務についての研修でした。後継者難のため事業承継をあきらめるとか、経営不振のための倒産とか、事業を縮小し個人事業にするとか、「会社をたたむ」というのは、後ろ向きな行為に感じてしまいます。正直言って解散・精算の実務というのはモチベーションが上がりません。しかしながら、経営者として悩みぬいた末の最後の決断として、厳粛に受け止める必要はあると思っています。
スタートアップ企業を応援したり、会社の成長をサポートすることを職業会計人冥利に尽きると思う私としては、やはり、前向きに、会社をこれからどう発展、成長させていくか考えたいです。
話を戻して、法人における社会保険料(厚生年金保険料、健康保険料)の負担は、個人事業における国民年金保険料と国民健康保険料に比べると、増します。しかし、国民年金(老齢基礎年金)に比べると、厚生年金保険(老齢厚生年金)の方が年金支給額が増え、老後(リタイア後)の保障が増すといえます。保険料の負担という「投資」が増した分、老後の保障という「リターン」も増すのです。
また、従業員の福利厚生面を考えると、やはり社会保険に加入している方が従業員の生活保障が手厚くなると言え、モチベーションが維持され長期にわたって安心して仕事してもらいやすいです。
事業の縮小など、厳しい経営判断をしなければならない局面は確かにありますが、単に、社会保険料の負担が増すから(社会保険料の負担のない)個人事業に戻すというのは、人に投資しない企業姿勢を感じてしまいます。
さらにいえば、個人事業から法人成りする理由として、社会保険に加入して老後の保障を手厚くしたいため、というのもあります。社会保険料の負担については肯定的にとらえた方が良いと考えます。
法人と個人事業の税金面での違い
株式会社など法人で事業をするのか、個人事業(フリーランス)で事業をするのか、税金面では次のような違いがあります。なお、いずれも青色申告を前提とし、法人は期末資本金額等が1億円以下の「中小法人」を前提としています。
項目 | 法人 | 個人 | どちらが有利か? |
法人税 又は 所得税の 税率 |
年800万円以下の所得 →15% 年800万超の所得 →23.4%(2018年3月31日以前開始事業年度)、23.2%(2018年4月1日以後開始事業年度)。 |
超過累進税率で所得金額により5%~45%+復興特別所得税。 | 所得の金額により変わる |
法人又は個人住民税 均等割 |
赤字でも負担あり(最低70,000円) | 所得がゼロならば課税されない。 | 個人有利 |
役員(経営者への)報酬 | 役員報酬は損金として所得計算上差し引ける。 さらに、役員個人の所得税計算においては給与所得控除により所得を圧縮できる。 |
そもそも個人事業主に報酬という概念が無く、必要経費として差し引くことはできない | 法人有利 |
働いた家族への適正額の給与 | 損金として所得計算上差し引ける | 必要経費として所得計算上差し引けるかは条件あり(青色事業専従者給与) | 法人有利 |
生命保険料 | 法人が負担した生命保険料は法人所得から差し引け、上限はない(ただし保険商品により一事業年度に差し引ける額は異なる)。 | 個人が負担した生命保険料は生命保険料控除として、最大12万円までしか差し引けない | 法人有利 |
損失の繰越 | 9年間繰越して、所得発生年度の所得と相殺可能。なお、2018年4月1日以後に開始する事業年度において生じた損失は10年間繰越可能 | 3年間繰越して、所得発生の年の所得と相殺可能。 | 法人有利 |
青色申告特別控除 | なし | あり(65万円又は10万円控除) | 個人有利 |
交際費 | 年800万円までは損金として所得計算上差し引ける(中小企業では一般的には年800万円を超えることはそうそうないが) | 金額の上限なく必要経費として差し引ける | 制度上は個人有利 |
なお、消費税については、法人を設立すると、資本金額が1,000万円以下であれば設立初年度と設立2期目が免税事業者となります。設立された法人は、個人とは別な「主体」とされ、個人事業主の基準期間(前々事業年度)を引き継がず、フレッシュスタートとなります。
税金面だけを考慮しない方がいいし、税金面を考慮せずいきなり法人設立も当然あり
社会保険料や税金の負担もさることながら、法人の設立は、それ以外の要因も判断要素となります。たとえば、
- 法人以外の事業主とは取引をしない会社と取引をしたいから
- 融資を受けるには法人の方が有利だから(法人の決算書、税務申告書は、個人のそれよりもずっと詳細であるため、銀行や信用金庫にとっては判断材料となる財務情報を入手しやすい)
- 社会的なステータスが高い(社長とフリーランスでは、社長の方が一目置かれる。さらにいえば、同じ「会社」でも株式会社と合同会社では、株式会社の代表は「代表取締役」、合同会社のそれは「代表社員」と、株式会社の代表者の肩書の方が知名度が高い)
フリーランスよりも株式会社の社長(代表取締役)の方が、事業意欲が強いと一目置かれる傾向があります。実際、独立開業する人でも、フリーランス(個人事業)を経由することなく、いきなり株式会社を設立する方もいらっしゃいます。
法人でやるか個人でやるか、税金や社会保険料を考慮しながらも、事業自体の規模や質をどのように成長させるかのビジョンや目標もあわせて、決めていくと良いでしょう。
【一日一新 Today’s New Things】
4月20日
- ボンヴィボン新百合ヶ丘店 特製カレーパン(レシピ改訂後初めて食べました。レシピ改訂前は、業者さんからカレーフィリング(具)を仕入れて使っていたが、レシピ改訂後は、カレーフィリングも自家製にしたとのこと。自家製フィリングはお肉のコクがはっきりするとともに、味わいが優しかったです!)
- Alameda 2% SWEET COLD BREW COFFEE(ボンヴィボン新百合ヶ丘店前のファミマで購入)
- 今日のブログに表を挿入した(TinyMCE Advancedというプラグインを使用)
(本投稿の執筆時間 120分)