世の中に良い仕事を残したい!そのために考えること
(執務机の上。大きいディスプレイの画像は母島の小富士から太平洋を臨む)
はじめに~みんな、世の中を良くしたいと願って仕事をしている
今年の公認会計士試験の論文式試験が、昨日終了しました。受験生の皆様、お疲れさまでした。しばし疲労回復につとめて、つぎのステップに移っていきましょう。
さて、受験生の皆様は、夢や目標を持って、合格の暁には世の中を良くしたい、グッドバイブレーションを与えたいと思って、試験に励んできたと思います。
公認会計士や税理士に限らず、デザイナーでも農家さんでも商社マンでも銀行員でも編集者でも警察官でも、みんな、仕事を通して、世の中を良くしたいと願って、思って、日々の仕事に邁進していると私はとらえています。
自分の仕事で関係する、お客様、同僚、上司部下、チームメンバー、さらには仕事の直接当事者ではないけれども仕事に触れたり目にしたりする第三者が、仕事をとおして満足したり、喜んだり、笑顔になったり、問題を解消できたりと、仕事をとおしてある種の「良い連鎖」を広げていこう、そう思いながら日々仕事に取り組んでいます。
みんながみんな世の中を良くしたいと思って仕事をして、そうした仕事で世の中を構成していったとしても、人間社会はそもそも極楽浄土にはならないですから、問題とか難題が無くなるということはないでしょう。しかし、みんながみんな世の中をより良くしようと努力した結果、今日の社会状況に至っています。解決すべき問題は確かに多いのですが、10年前、20年前、50年前、100年前、200年前、1000年前よりは、よりよい社会になってきているはずです。
公認会計士や税理士は、そもそも世の中を良くしていくことが期待されている職業
さて、話を私の仕事である公認会計士業務や税理士業務に移しますが、私もまた、よりよい仕事、世の中がよりよくなるように願いながら仕事をしているつもりでおりますし、今後も、世の中をより良くしたいと思って仕事に邁進します。
しかしながら、どのように仕事を創り上げて、世の中がより良くなるように仕向けて行くか、悩むことは少なくありません。
目の前のお客様にとって、自分の助言は役に立っているのか、自分の仕事が本当に社会の役にたっているのか、近視眼的になっていないか、と、自問自答を繰り返すようにしています。
さらには、公認会計士と税理士は公務員ではありませんが公益性の強い職業であると私は思います。仕事上拠って立つ会計基準にしても税法にしても、社会的な合意のもとにつくられている上、仕事の結果が、目の前のお客様だけではなく、第三者にも影響を与えるからです。
公認会計士の監査業務であれば、決算書に添付された監査報告書を見て、お客様ではない第三者である決算書の利用者(投資家、銀行など債権者)がひとまずは安心して決算書のデータを利用します。
コンサルティングであれば、経営者の経営判断の参考にされ、経営の対象となる従業員や顧客に影響を与えます。
税務業務であれば、納税額の計算や計算過程の上で生じる判断の結果によって、企業の資金繰りに影響を与えるばかりでなく、国や都道府県、市町村に納める税金の金額が決まり、その税金で医療や介護や教育や警察消防など、多彩な公的活動が決まります。
公認会計士と税理士の仕事は、直接のお客様だけではなく、直接のお客様を通して第三者にも影響していくので、社会的に良い影響、良いインパクトを与えたいとする意識を、強く持つ必要性が高いといえます。
目次
記帳代行で世の中は良くなっていくか
以下では個別の仕事について「世の中が良くなるか」どうかという観点から考察してみます。
記帳代行は、世の中のためになるようで、ならないと私は思います。
たしかに、記帳というのは面倒で、しばしばこれに時間を取られることに鬱陶しさを(専門家である私ですら)感じてしまいます。記帳は早く済ませるに限るといえます(この点から、私はクラウド会計には、記帳時間を大幅に削減できるという点で非常に大きな可能性があるととらえています)。
面倒な記帳は専門家に丸投げして自分は営業とかものづくりに専念したい。その気持ちは分からないではありません。
しかし、記帳を自分でせずに丸投げしてしまうと、自分の会社のもうけや、借り入れと財産とのバランス、税金の計算、しまいには資金繰りの状況が分からなくなるといえます。
記帳を通じて、もうけが生じるしくみや、借り入れ・元手と財産のバランス、税金の計算や資金繰りが理解しやすくなります。
さらにいえば、お金の管理は記帳を通じてするものです。お金は経営資源で、会計は経営管理の道具。記帳を丸投げしてしまえば、たしかにモノづくりや営業に専念できるのでしょうが、経営者の重要な才覚であるお金の管理力が育ちません。お金を十分に管理できて初めて経営者といえます。
当事務所で記帳代行をしないのは、経営者自ら記帳を試行錯誤しながらしてみて、お金を十分に管理できる経営者になって頂きたいからです。記帳代行の普及は経営者の育成を阻むものとして、必ずしも社会のためにならないと私は考えています。
もちろん、記帳のやり方(会計ソフトへの入力のしかた)は、アドバイザリー業務として、理解できるまでお教えいたします。
無料相談は世の中のためになるか
確定申告の時期には特に目立つ「税理士による無料相談」、ご相談される方にとっては確かに無料ですが、税理士として相談員となれば報酬(日当)を税理士会から頂けます。無料相談は無報酬ではないのです。
税務署の職員も無報酬で相談員として窓口にいるわけではなく、税務署の職務として国から給料をもらって相談員をやるわけです。
相談される方にとって、特に納めるであろう税金が多くはない納税者の方にとって、無料相談というのは利用価値があります。スタートアップしたばかりの段階など、税務署に聞けばただで教えてもらえますから、積極的に活用したほうがいいとも言えます。
しかし、そもそも無料相談の相談員(である税理士)は無報酬ではないうえ、税理士としてビジネスとして事務所をもって仕事をしている以上、無報酬で仕事を請け負うことはできないと言えます。
確かに、よくあるケースとして、税務申告書のような最終的なプロダクトが決まっていて、そのプロダクト作成に向けて初回相談を無料にするとか、営業活動の一環として初回訪問○○分無料というのは存在しますが、「完全」無料の相談というのは経済合理性を欠き、仕事として成り立たないと言えます。
さらには、税理士が無料で相談に応じるとすれば、税務署や役所との役割分担が図れないともいえます。無料での相談は、無料相談会を活用する、税務署や地方自治体の役所を活用するのが妥当といえます。
そして、税理士は、有料で相談に応じうるだけの高度な問題解決能力を磨いているので、その相談能力・問題解決能力を活用した結果に対しては報酬が発生するものといえます。
書面添付は世の中にどう影響を与えるか
税理士事務所で「税務調査に強い」「税務調査対策に重点」ということを前面にだしている事務所は少なくありません。確かに、税務調査対策をしっかりしてくれる事務所というのは頼もしく、安心して仕事を任せる経営者、依頼主の方も多いと思われます。
しかし、私は、そもそも税務調査など無い方が良いと考えています。
税務調査を受けるのはそれなりの時間と労力の負担がありますから、避けられるならば避けた方がいいのです。
そこで、当事務所(私)は、書面添付を積極的に活用していく方針をとることにします。書面添付とは、税務署に提出する申告書に添付する書類で、申告書を作成する過程や手続き、相談内容とその回答の要旨を記載するものです。すなわち、税理士としてどのように税務申告書の作成に専門家として関与したかをプレゼンテーションする書類なのです。
税務署としては、添付されたこの書面を読んで、提出された税務申告書に係る税理士の仕事を理解します。かかる理解は税務上の問題点をどのようにクリアしたのかの理解も含むので、実地に調査する段階の前に、税務署としてある程度以上の理解ができるものといえます。
このため、税務署としては添付書面を作成した税理士にヒアリングを行い、このヒアリングの結果いかんで税務署として解決すべき問題が解決できれば、税務調査が省略されることとなります。
税務調査がどのくらいの割合で省略されるかについては、確かなことは書けませんが(必ず省略されるとは限らない)、税務調査の省略によって、税理士、依頼主(企業や相続人など)、税務署の時間と労力の負担を削減できることを考えれば、書面添付は取り組むべき社会的価値があるといえます。
おわりに
良かれと思ってやってもそれが本当にその人のためになるとは限らないし、世の中のためになるとも限らない
良かれと思って引き受けて、短期的には負担を逃れることがあっても、中長期的にはそうとは言えない。記帳代行(丸投げ)はその典型と私はとらえています。
以前には税理士として(無料相談会場以外で)無料で相談に応じたこともありましたが、それにかける時間や、税務署の存在意義を考えると、社会的にも事務所てきにもペイするとはいえないと思います。
そして、書面添付は税理士にとっても依頼主にとっても負担はありますが、税務調査の社会的負担に比べれば軽減される可能性が大きいといえます。
今回は、記帳代行、無料相談、書面添付と3つのケースを考えてみましたが、それ以外の業務の局面においても、常日頃から「この仕事は社会や世界のためになっているのか?」を考えるくせをつけてまいります。
世の中をより良くしていきたい
食、アート、文学、ジャーナリズム、IT、AI、コンピュータ、自動車など、世の中を革新に導いた製品やサービスはあまたあります。
公認会計士及び税理士という「職業会計人」として、私も、世の中をより良くし、革新に導くことが何かできないか、今日を境に気持ちをあらたに、常に考えて、行動していきたいです。
(本投稿の執筆時間 90分)
【編集後記】
近々ホームページを修正します。今日はそのための写真を、写真家の方に来所して頂き撮影して頂きました。引き続き当事務所のホームページを見て頂けると嬉しく思います。
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