公認会計士協会と税理士会の両方で認められる研修を受けて、時間を有効に使う。

公認会計士は年40時間以上、税理士は年36時間以上、研修を受ける必要があるが、76時間以上受ける必要はない。

本投稿は、公認会計士と税理士の両方に登録している場合に、両方の研修制度で求められる年間の必要研修時間数を、何時間確保すればよいか?を検討する材料として執筆しています。

公認会計士は、年40時間以上、研修を受けることが求められます。

(より正確には、公認会計士制度のもとでは、多くの場合1時間=1単位と認定され、本年度、前年度及び前々年度の単位数の合計が120単位以上となれば、本年度の必要研修単位を達成できることになります。なお、職業倫理、監査(不正事例含む)、税務の各区分については最低取得単位数が決められていますが、本投稿では割愛します。)

一方、税理士は、年36時間以上、研修を受けることが求められます。

一見すると、公認会計士協会の研修を40時間、税理士会の研修を36時間、それぞれ受けて、合計76時間以上受けなければならないのか?と思ってしまいますが、そうではありません。

次に示すようなかたちで、公認会計士協会の研修時間が税理士会の研修時間として認められ、また税理士会の研修時間が公認会計士協会の研修時間として認められるようになっているので、年間に76時間以上受ける必要はありません。

公認会計士協会の研修時間(単位)と税理士会の研修時間の関係

上の表は、研修の主催者(会計士協会と税理士会)を縦軸とし、横軸は、研修の主催者・種類(スタイル)ごとに、会計士協会では何単位認められるか、税理士会では何単位認められるかを表しています。

会計士協会における、税理士会の研修の受講時間の扱いはどうか?

  • 「集合研修」は受講したすべての時間(単位)が認められる
  • 「eラーニング(マルチメディア研修)」は受講した時間2時間ごとに1単位となり認められるのは半分となる(2時間に満たない端数が生じた場合は切り捨てられる。例えば研修時間が5時間であれば、1時間は切り捨てられ、2単位となる)

税理士会の集合研修に出席すれば、受けた時間がそのまま会計士協会の研修時間(単位)として認められるので、その分時間の節約になります。

一方、税理士会のeラーニングは、会計士協会で認められる時間は受けた時間の半分のみで、その上申請にひと手間かかります。申請の際に研修の概要を200字で記述する必要があります(税理士会のeラーニングは、会計士協会では「自己学習」として取り扱われるためです)。

税理士会における、会計士協会の研修の受講時間の扱いはどうか

  • 会計士協会の集合研修については税理士業務に隣接する内容の研修に限り年間18時間まで認められる
  • eラーニングと自己学習は認められない

会計士協会の集合研修に18時間出席して、税理士会の研修単位としても登録するのが、時間の有効活用という点ではベターです。

一方で、会計士協会のeラーニングは税理士会では受講時間として認められていないので注意が必要です(この点については、税理士会でも受講時間として認められるよう、改善を希望するところです)。

さらに、会計士協会では「自己学習」が研修時間(単位)として認められていますが、税理士会では研修時間として認められていません(「自己学習」の規定がない。税理士会でも自己学習を受講時間として認めるよう制度化を望みます)。

※会計士協会の「自己学習」とは主に以下のものです。

  • おおむね当年度と前年度の会計・監査ジャーナルやJICPAニュースレターの「CPE指定記事(記事ごとに単位数が決められている)」の読書
  • 専門図書・雑誌記事の読書(2時間で1単位、なお図書は1冊につき5単位まで)
  • 会計士協会の委員会等の出席(出席1回につき1単位)

会計士協会と税理士会では時間のカウントが少し異なる

細かい話のように聞こえるかもしれませんが、「チリも積もれば山となる」ということで触れます。

  • 会計士協会では一部(上述した「自己学習」の場合など)を除いて、研修時間1時間=1単位となる。1時間を超える研修で30分未満の端数が生じた場合は切り捨て、30分以上の端数が生じた場合には1時間に切り上げて、単位計算を行う。
  • 税理士会では会計士協会のように時間の単位計算はせず、時間数として認定するところ、30分単位で時間が認定される。すなわち、30分未満の端数が生じた場合は30分に切り上げる。

具体例として、会計士協会の集合研修を3時間30分受講した場合、

  • 会計士協会では、4単位(端数の30分を切り上げることで4時間として扱う)
  • 税理士会では3.5時間(30分ごとに認定)

が取得時間(単位)数として登録されることになります。

会計士協会の集合研修が仮に、3時間20分だった場合には、

  • 会計士協会では、3単位(端数の20分は切り捨てられる)
  • 税理士会では3.5時間(端数の20分は30分に切り上げ)

となります。

なお、税理士会に集計された年間の研修受講時間合計数に1時間未満の端数が生じた場合には、この端数は1時間に切り上げられます。例えば、36.5時間となった場合、年間合計時間数は端数が切り上げられて37時間となります。

年間の研修時間数の一例

上の表で例示したケースは、会計士協会の集合研修に16時間、税理士会の集合研修に20時間出席し、税理士会の必要研修時間数36時間を充足しています。さらに会計士協会のeラーニングを4時間受けて、会計士協会の必要研修時間数40時間を充足しています。

このように、受ける研修の全部ないしほとんどを集合研修にすると、義務付けられた研修時間を最短40時間でクリアできることになります。

eラーニングは時間(単位)認定に限界もあるが、時間と場所の制約を受けずに受講できるメリットは大きい

会計士協会のeラーニングは、税理士会の研修時間として認められず、税理士会のeラーニングは、会計士協会の単位認定にあたり時間が半分に計算されてしまうという限界があります。

しかし、eラーニングはネットにつながっていれば、時間と場所の制約を受けずに受講することができます。隙間時間に受けることができます。

集合研修はeラーニング化される前に開催されることが多いので、情報の入手を早くできるというメリットもあるのですが、決まった日時に決まった場所に行かなければならないため、そのために予定を空ける必要があります。)

会計士協会のeラーニングは、Windowsのみの対応のため、AndroidスマホやiPhoneでは視聴できず、WindowsPCやWindowsタブレットが必要ですが、

税理士会のeラーニングはiPhoneで視聴できます(Androidでも視聴できるようですが、当事務所では動作確認をしておりません)。この点は税理士会のeラーニングの優れたところであり、会計士協会のeラーニングも早期にスマホ対応することが期待されます。

終わりに

公認会計士協会も税理士会も、研修年度は4月1日~3月31日までで、今年度の研修を受講できるのは3月31日までです(単位の申請期限は4月1日以降に設けられていますが、ここでは割愛します)。

執筆時点では新コロナウイルスの感染予防のため、集合研修はほとんど中止になっていますが、eラーニングで隙間時間を有効活用しつつ必要研修時間(単位)を達成しましょう。

また、肝心な点ですが、受講したい研修やセミナーや授業があるならば、時間を作って、単位認定されるかどうかにかかわらずどしどし受けるのが良いと思います。

やりたい勉強は楽しいうえ、はかどるもの。

単位のことも考える必要はありますが、やりたい勉強をしましょう。

≪参考資料≫

  • 日本公認会計士協会CPE ONLINE
  • 研修諸規則Q&A(平成29年3月改訂版、日本税理士会連合会研修部)

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