監査と四半期レビューとは何が違うのか?<後編>

「監査」は「重要事項のすべてが『OK』か」を確かめる

前回の投稿で「レビュー」は「(すべての重要事項に)NGが無い」ことを確かめると書きましたが、監査においては「(重要事項が)すべてOKである」かどうかを確かめます

「監査」というのは、社会的に(特に投資家など決算書の利用者から)承認を得られる程度の高い確度をもってOKであることを証明することになるので、「NGがないことさえ確かめればよい」レビューと比べ、多くの作業量と作業時間を要します。レビューでも実施する質問と分析に加え、

  • 現金や預金などの現物を帳簿と突き合わせる「実査」
  • 棚卸しに立ち会って、規程やマニュアルどおりに棚卸しが行われていることを観察するとともに、いくつかは実際に数えて帳簿につながる記録と突き合わせる「立会」
  • 売掛金の請求先や、銀行や証券会社に取引残高を照会し文書で回答を入手する「確認」
  • その他、契約書、請求書、領収書の原本と帳簿を突き合わせる「証憑(しょうひょう)突合」(現場ではよく「バウチング(Vouching)」と呼ばれる)

のような、現物ないし実際の取引と帳簿の記録が整合しているかを確かめる(裏付ける)作業を中心に、時間を要する作業(監査手続)が行われることになります。

また、各種引当金、減損会計、税効果会計のように、決算の数値を確定するために見積りを要するものについては、その見積りが合理的かどうか、会計基準に準拠しているかを、社内外の各種の資料を収集して精査しつつ確かめることになります。

「監査報告書」は年度の決算書に対して年に1回発行されるが、監査作業は(実は)1年を通して行われる。

四半期決算書には「四半期レビュー報告書」が発行され、年度の決算書には「監査報告書」が発行されます。

監査報告書の発行は年に1回ですが、監査の作業は年に1回ではなく、通年行われます。四半期レビューの作業が四半期ごと(年に3回)であるのとは、一見対照的なように思えますが、そうではありません。

これは、四半期レビューは年間の監査業務のスケジュール(計画)の一環として位置づけられること、また、四半期決算書も年度の決算書も同じ帳簿から作成されることを、踏まえてのものです。

そもそも企業の会計帳簿が適正に作成されているかどうかというのは、会社の内部統制(会計帳簿が適切に作成されるような業務の流れと組織の設計と管理の体制)が有効に機能しているかどうかにかかっているので、内部統制の有効性を、年度の途中の適切な時期に評価します。

さらに、一年間の取引が帳簿に適切に反映されているかを、年度末に一度に一気にみるのは無理があります。年度の途中の適切な時期、実務上は四半期レビューの時期に合わせることが多いのですが四半期レビュー以外の時期にも適宜の時期に、期中の取引についてみていきます。

このように、監査の業務は、四半期レビューと異なり、一年をとおして行われます。

(本投稿の執筆時間 45分)

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