監査って、わりと身近です!

公認会計士の監査は、第三者の専門家による監査

写真が示しているのは、公認会計士が監査の際に遵守する「監査基準 第一 監査の目的」の冒頭です。

公認会計士の監査というのは、企業の作成した決算書が、会計基準に従って、企業の経営状況を適正に表示しているかどうかをチェックする仕事です。

その特徴は、専門性(会計基準に従っているかどうかの判定)もありますが、経営者とは独立した第三者の立場から監査するところにあります。

経営の当事者から独立した立場から監査するー問題点の有無を確かめるーというのは、重要なことです。自らのことは自らが全て分かっているとは限らず、逆に、自分のことだからかえってなかなかよく分からないこと、分かりたくないことが、往々にしてあります。そうしたことを、第三者の立場から見てもらって、問題点があれば教えてもらえるのです。耳に痛い意見であっても、決算書や経営にとって重要な問題点であれば、ご指摘申し上げるというサービスなのです。良薬口に苦し、です。

監査に限らず、例えば、メンターに意見を求めるとか、外部のコンサルタントに意見を求めるとか、カウンセラーに相談に乗ってもらったりしますよね。メンターもコンサルもカウンセラーも、当事者とは独立した第三者の立場であることが特長であり、強みといえます。

もちろん会計監査の主目的は、投資家や株主や債権者といった企業外部の利害関係者のためです。利害関係者が投資判断とか融資判断を誤るような、そういう重要な「誤り(虚偽記載といいます)」が無いかどうか、チェックすることです。

しかし、それと並んで、企業自身のためでもあるといえます。企業が自らの経営判断を誤らないようにするための会計監査でもあるのです。

「監査」という堅い表現をしないけれど「チェック」も監査の一種

さて「監査」というと、堅苦しい響きが否めないのですが、日常話される言葉である「チェック」も「監査」に含まれるもの、監査の一種といえます。

お買い物の時には、お買い物リストを作る方もいらっしゃると思います。実際にお店でお買い物をして、レジで精算を済ませる前に、お買い物リストとカゴに入れた物を照合して、お買い物リスト通りに商品をカゴに入れたことを「チェック」しますよね。

お買い物リスト通りにもれなく正確に買えていることを「チェック」ー「監査」しているといえます。

ここでの「チェック」は第三者の立場からのものではなく「セルフ(自己)チェック」です。

話を広げれば、個人が確定申告するときに、確定申告書に正確にもれなく収入、所得、社会保険料や配偶者といった所得控除、住宅ローン控除など税額控除を記入したか、セルフチェックして、税務署に提出するものですし、

会社(法人)であっても、顧問税理士や監査法人のチェック(監査)を受ける前に、自社で(経理部として)チェックするものですし、

個人事業主やフリーランスにとっても、毎日の、毎月の会計ソフトへの入力に際しては、入力が間違っていないかどうか確かめるために、入力後にいま一度入力されたデータ(画面)と領収書や請求書を突き合わせてチェックするものといえます。

会社もセルフチェックとして「内部監査」をしている

会社でも、組織的にセルフチェックをする仕組みを整備しているところがあります。内部監査です。内部監査部門という部署を立ち上げて、全社横断的に、会計監査はもちろん、業務が法律に従っているかとか、定めた規程や会議の議決通りに事務や事業が営まれているか(業務監査と呼ばれます)とか、様々な監査(チェック)をしています。

内部監査の目的は、総括すれば、経営の成果をあげるためといえます。

さらに、会社によっては監査役を置いて、監査役による監査をするところもあります。監査役は会社内部の役職ですが、経営にあたる取締役とは異なる立場にあり、取締役会に出席する、会社の事業のプロセスや成果を調査するなどして、取締役の職務執行を監査します。監査役の監査の結果は株主総会に報告されます。

監査役も会計監査を担当できますが、上場会社や、非上場でも資本金5億円以上又は負債総額200億円以上の大規模な会社になってくると、取引も膨大、複雑になってくるため、会計や監査の専門家である外部の監査法人(公認会計士)に委ねることとなります。

税理士も第三者として税法に準拠しているか、お客様の会計ソフトの入力や決算書をチェックしています

さて、一般的には監査の専門家とは定義されていないのですが、税理士もまた、お客様である企業の会計ソフトへの入力内容や、決算書の内容をチェックしています。

特に、月次巡回監査といって、毎月お客様を訪問し、入力内容にもれやダブりが無く正確か、税法に準拠しているかチェックするとともに、経営上重要な変化や、その予兆が無いか確認し、是正すべき点は是正するよう助言し、対策を立てるべき点は対策を立てるよう、何がしかの提案をします。

税理士もまた、経営からは独立した第三者として、税法に準拠しているかどうかのチェックや、税務当局から(経費処理が)否認されるリスクのチェック、経営、特に財務・資金繰りに関して各種のアドバイスをしています。

まとめ

「監査」という言葉を耳にすると、難しい国家試験をパスした資格を有する専門家による、堅い業務であると連想すると思います。専門家の監査は確かに堅いのですが、日常的に耳にする「チェック」も「監査」の一種であること、また、第三者が行うものだけでなく自ら行う「チェック」もまた「監査」と言えることを、お話ししてまいりました。「監査」というものが「割と身近」だと感じていただければと思い、パソコンを閉じます(筆を置きます)。

(本投稿の執筆時間 80分)

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