ひとりでも内部統制

無理のあるタイトルかも知れませんが

「ひとりでも内部統制」というのは(書いておいてなんですが)、無理のある言い方です。何故かというと、「内部統制」とは、人と組織とITが有機的に組み合わさった、組織内部の管理体制ないしチェック体制のことを意味し、組織というものが前提になっているものだからです。

内部統制を構成するパーツとして例えば「承認」がありますが、平たくいえば、部下が支出した出張旅費などの経費を、その上司や、経理担当者が(従業員の個人の負担ではなく、会社の経費として)認めることを意味します。部下・上司・経理担当者と、社内の登場人物が複数になります。

このように、内部統制は組織を前提にしていますが、それでは、ひとりで事業を営んでいる場合(フリーランス、事業主だけの店、ひとり社長)に内部統制はあり得ないのか?と言われれば、「あり得ない」とは言い切れません。専門用語としての「内部統制」の定義には当てはまらないかも知れませんが、セルフチェックという統制を働かせることは出来ます。

「ひとりでも内部統制」としてのセルフチェックの手段

ひとりで会計(経理)をするあたって、公認会計士や税理士(会計事務所)のような外部の専門家の関与が無い限り、第三者がミスを防止したり発見したりしてくれることはなく、自分自身で防止したり発見したりするしかありません。

自分自身でミスを防止または発見するための工夫として、ひとり会計事務所の私は、以下のようなことをやっています。

  • 整理→書類やデータについては、必要なもののみ、必要な期間(例えば領収書や請求書は7年、青色決算書や確定申告書は10年)保存し、不必要なもの、不必要となったものは速やかに処分する(「整理」という言葉には「不要なものを処分する」という意味が含まれている)
  • 整頓→整然と並べる。同じ種類のものは分散させずにひとかたまりにまとめる。紙の領収書や請求書は日付順に並べるなど、自分なりのルールをつくってそれに従って並べる(「整頓」という言葉には「処分する」という意味合いは含まれず、秩序正しく並べるという意味合いがある)
  • 会計ソフト(帳簿)の残高と現物とが一致するかを、突き合わせることで確かめる→現金の有高が会計ソフトの現金残高と一致しているか。預金通帳の残高が会計ソフトの預金残高と一致しているか(現金は毎日、預金通帳残高は最低でも月次決算で)。郵便切手の有高は会計ソフトの「貯蔵品」残高と一致しているか。事務所敷金の金額は過年度から引き継がれ、賃貸借契約書と一致し、会計ソフトの「敷金」残高と一致しているか。など。現物や原本と会計ソフトの残高が一致しているかを確かめる(製造小売店であれば、原材料や製品(たな卸資産)の数量×単価が、会計ソフトの「原材料」「製品」勘定と一致しているかも確かめる必要がある。現物と会計ソフトとの一致は最重要)
  • 会計(ソフト)と他の管理資料(例えば、レジのジャーナル(売上)、固定資産台帳など)が一致しているか。
  • 月次(毎月の)推移、移動年計(当月までの12ヶ月間の合計について、月次の推移をみるもの)、前年度との比較、前年同月との比較により、異常な変動、説明のつかない変動が無いかの確認

やっているビジネスによっては、他にも必要なセルフチェックの方法も考えられます。また、するべきチェックをし忘れないように、そのチェックをしたかどうかを記録するための「チェックリスト」を活用することも考えられます。

セルフチェックだけでは不安が大きい場合には、会計事務所の活用を。

外部からのチェックは「内部統制」とは言えませんが、セルフチェックだけでは第三者の視点が入らないので、思わぬ見落としの可能性は否定できません。セルフチェックだけでは不安が大きいという場合には、会計事務所によるチェック(例えば「月次巡回監査」(毎月1回、前月の会計の内容にミスが無いかチェックする作業。会計事務所業界ではよく使われる用語))を導入するのも一つの手です。

会計事務所によるチェックは、会社の会計のミスが無いか(少なくとも「重要なミスが無いかどうか」)を確かめるためのものですが、ビジネスの内容や規模によって、チェックの内容や方法、強度、割合は変わるものです。チェックに要する人員、時間、コストには限界があるので、もっとも効果の大きい方法を模索して実行することになります。チェックの内容や方法、強度や割合は、会計事務所と十分に打ち合わせの上、実行される必要があります。

(本投稿の執筆時間 75分)

(アイキャッチ画像は広島・銀山町のPOPPO Cafeより。今日は平和祈念式典で黙祷してきました。広島のことについてはまた日を改めてアップしたいと思います。)

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