「支払調書」と「源泉徴収票」は違うもの〜働き方の違いを意味しています
働いた先から確定申告の時期までにもらえる書類
今くらいの時期までには、働いた先から、昨年一年間に支払われた給料なり代金なりの、働いた対価の金額について、次の2種類の書類を受け取っていると思われます。「給与所得の源泉徴収票」と「支払調書」です。
この2種類の書類については、よく混同されるところですが、タイトルが違うことからして、違う書類です。
給与所得の源泉徴収票
次のような様式となっています。(個人情報の保護上、消去している部分がありますが、非常勤の勤務先から頂いたものです)
タイトルに「給与所得の・・・」とある通り、これは一年間に支払われた給料に関する書類です。これが発行されるということは、発行元での働き方は雇用契約に基づくもの、すなわち雇われている、ということになります。
雇用契約で働くというのは、ざっくりいえば従業員。会社員、パート、アルバイトの部類に入ります。発行元である会社などの(雇用主、上司の)指揮命令に基づいて行う働き方です。その対価が給与所得、ということです。
この「給与所得の源泉徴収票」については、働いた先の(発行元である)会社などが税務署に提出しなければならない(給与の種類ないし金額により税務署に提出を要しない場合あり)とともに、働いた人(給料が支払われた人、従業員)に発行しなければなりません(給料が支払われた人への発行義務があります)。
さらに、医療費控除や寄附金控除を受けるなどのために確定申告をする場合には、この「給与所得の源泉徴収票」を添付して税務署に提出しなければなりません(書面提出の場合、電子申告の場合は申告期限から5年間保存の義務)。
働き方が、従業員的なもの(会社などの指揮命令系統によるもの)と思われ、なおかつ、未だ「給与所得の源泉徴収票」を受け取っていないならば、働いた先(会社など)に送ってもらうよう、依頼しましょう。
支払調書
ここでは「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を取り上げます。以下のような様式です。(個人情報の保護上、消去している部分がありますが、業務の委託者から頂いたものです)
このようなかたちで「報酬・(中略)・の支払調書」を受け取るということは、発行元(会社など)での働き方は、雇用契約ではない契約による働き方(例えば、業務請負契約)に基づくものといえます。
指揮命令に基づかない、仕事の発注者と対等に仕事の条件を交渉できるような、時間や場所の拘束を受けない働き方、自由裁量の効く働き方に基づくものといえます。
よくあるのが、私のような会計士報酬や税理士報酬など「士業の報酬」、原稿料、印税、通訳料、講演料、作曲料、著作権などの使用料、出演料、(保険の)外交員報酬などです。
この「支払調書」を受け取るような働き方は、所得分類でいえば、事業所得または雑所得となります。ざっくりといえば、継続・反復・営利目的を持って、それだけで生計を立てられるよう意図していれば事業所得、そうでなければ雑所得となります。
「支払調書」は、発行元である働いた先(会社など、報酬を支払った者)は税務署に提出する義務があるものの、働いた人(報酬が支払われた人)に発行する法律上の義務はありません。働いた先から「支払調書」が送られてくるのは、サービス的な(確定申告の参考となるよう配慮しての)慣行と言えます。
さらに、働いた人の確定申告書に(報酬を支払った者から送られた)「支払調書」を添付して税務署に提出する必要もありません(電子申告の場合の保存義務もありません)。
おわりに
「給与所得の源泉徴収票」と「支払調書」の違いをしっかり見極めることも重要ですが、それ以上に重要なことは、そもそもどのような働き方を相手にしているか、ということです。
業務請負のつもりで働いているが実は指揮命令に基づいていて自由裁量もない雇用のようなものだったとか、逆に雇われたつもりだったが、自由裁量のきくタイプの業務請負的な働き方だったとか、混同がありがちのように思います。
働き方の条件については、しっかりと契約書など書面で確認し、後々トラブルにならないよう、相手先としっかり詰めておく必要があると思います。トラブルになりそうであれば最寄りの役所や、弁護士など労働の専門家に相談するのも一案です。
自由な働き方を実現するためにも、働き方に関する税務と法律の知識を持ちましょう。
※執筆日現在の法令に基づく一般的な事項を記載しており、意見については私見です。個別具体的な会計・税務上の判断については、公認会計士・税理士等の専門家にご相談願います。
<編集後記>
川崎市麻生区にある川崎西税務署では、今日から確定申告の特設会場が設けられました。申告期限までに申告すべきですが、確定申告は早めに終わらせ、2018年に集中できる体制にしましょう。
(本投稿の執筆時間 85分)