公認会計士と税理士のCPE(継続的専門研修)制度について、法律の規定を比べてみました

税理士会から初めて届いた「研修受講時間のお知らせ」

昨日、税理士会から届いた「平成30年度研修受講時間のお知らせ」
(アイキャッチ画像は、この文書が入っていた封筒)

昨日、税理士会から写真の「研修受講時間のお知らせ」が封書で届きました。税理士登録して以来初めてです。

2015年度から税理士会の会則で、研修を年間36時間以上受けることが義務化され、今年の10月1日から税理士情報検索サイトで、前年度に義務を果たしているかどうかの情報が掲載されることになっています。「研修受講時間のお知らせ」はこれを踏まえて発送されたものと思います。

さて、このお知らせを読んで思いたったのですが、2年前のこの投稿

有資格者には研修が義務付けられています~CPEについて

を、読み返してみまして、少し補足しようと思いました。 税理士法と公認会計士法というそれぞれの法律において、研修を受ける義務(研修制度)はどのように規定されているか、についてです。

税理士法や公認会計士法は、普段読み返すことはほとんどなく、職業倫理研修などの機会に年に1回程度読み返す程度ですが、気になったので見てみました。

税理士法の規定

税理士の研修受講については、税理士法第39条の2に規定されています。

(研修)
第三十九条の二 税理士は、所属税理士会及び日本税理士会連合会が行う研修を受け、その資質の向上を図るように努めなければならない。

(e-Gov法令検索 執筆日現在)

税理士法という法律(国会で決まる)では「努めなければならない」と明記され、「受けなければならない」とはなっていません。このような規定ぶりは「努力義務」といって、努力しなければならないけれども、結果を達成することまでは義務として求めていないのです。

しかしながら、(国会で決まる)法律ではなく、税理士会としての自主ルールとしての「会則」で義務化されています。

(会員の研修)

第58条 税理士会員は,その資質の向上を図るため,本会及び連合会が行う研修を受けなければならない。

(東京地方税理士会会則 執筆日現在)

義務化されてはいるけれども、見方を変えれば、法律ではなく自主ルールである「会則」で義務化されているに過ぎない、ともいえることとなります。

このため、年間36時間という研修受講時間を達成できなかった場合に、これを直接の原因とする罰則は、今のところありません。

10月1日以降、税理士情報検索サイトで義務を果たしているかどうかの情報を掲載することによる、間接的なプレッシャーはあると思われますが、罰則ほどには強力ではないでしょう。

参考までに、ご自身の顧問税理士が研修受講義務をどの程度果たしているか、10月1日以後に税理士情報検索サイトを見てみることはおすすめいたします。

公認会計士法の規定

公認会計士の研修受講については、公認会計士法第28条に規定されています。

(研修)
第二十八条 公認会計士は、内閣府令で定めるところにより、日本公認会計士協会が行う資質の向上を図るための研修を受けるものとする

(e-Gov法令検索 執筆日現在)

「内閣府令で定めるところにより」と記載されているので、内閣府令も見てみます。なお、条文内のかっこ”()”は省略します。

(研修の受講)
第一条 公認会計士は、一事業年度につき、日本公認会計士協会が行う研修を四十単位以上受けるものとする
2 前項の単位の計算方法については、講義により行う研修一時間を一単位とすることを基本として、研修の方法ごとに協会が定めるところによる。

( 公認会計士法第二十八条に規定する研修に関する内閣府令 、e-Gov法令検索 執筆日現在)

税理士法における記載ぶり「努めなければならない」とは異なり、公認会計士法及びその内閣府令では「受けるものとする」と記載されています。言葉が違う以上もちろん意味が違います。

受けるものとする」が意味するところは「受けることを当然とする」「受けることを原則とする」ということです。

「受けなれけばならない」のように、絶対的な(強い)義務付けの意味合いまではもたないものの、そうであって当然・そうであるのが原則という、原則を含んだ表現です。

このことから、公認会計士のCPE(継続的専門研修)制度は、法律によって当然とされている=(強くないながらも)義務化されていると認められ、そうであるからこそ、CPEの義務(所定単位数以上の受講)を達成できなかった場合に、氏名が公示されたり、(公認会計士としての)会員権が停止されたり、懲戒されたりします。

公認会計士協会の2018年度履修結果通知書(PDF)

終わりに

私の会計キャリアは公認会計士から始まったこともあり、CPE制度のもと、1年間に40単位以上取得することは習慣になっていました。見方をかえれば、それが当たり前になっていて、ややもすると単位の取得が目的になる傾向がありました。

公認会計士も税理士も、業界として、一定水準以上の業務品質を確保し、社会から一定水準以上の信頼を得るために、研修を義務化していますが、

ひとりの仕事人としては、単位の取得はあくまでも手段~業務の品質を向上し、クライアントの問題解決に資するため、問題解決能力を向上するための手段~と位置づけなければと、このブログを書きながら「はちまきを締め直す」次第です。

(本投稿の執筆時間 75分)

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