取引の流れ(業務フロー)を把握する、整理する:仕入と経費
取引の流れ(業務フロー)を意識することは効率化への第一歩
ビジネスとは、繰り返される取引といえます。
- モノやサービスを販売する
- モノを賃貸する
- 製造や販売に必要なモノやサービスを買う
- 製造や販売に必要なモノを賃借する
- PRのため広告宣伝活動、販促活動に必要な支出をする
- 能力開発のためにセミナー受講料を支払う
こうした、様々な取引を日々繰り返し、ビジネスを継続、発展、成長させているといえます。
そして、こうした様々な取引は、会計記録として、日々会計ソフトに入力(記帳)されていくものでもあり、取引のひとつひとつには、取引の始まりから終わりまで、一貫した流れがあります。そして、流れにそって、モノやお金の出入りと、会計ソフトへの入力の必要が生じます。
当ブログをお読みになっている経営者や個人事業主、フリーランスの皆様の中にはもしかすると、取引の流れを意識したことのない方もいらっしゃるかもしれませんが、実際の取引と会計が結びついている以上、取引の流れを把握することは、会計業務を効率化するための第一歩です。取引の流れが把握できていれば、
- 同じような取引の流れになっている取引については、一括してまとめて処理し得る(典型的なのは振込と振込の会計処理をまとめて行いうること)
- イレギュラーな取引の流れになっている取引については、請求の洩れとか会計処理の洩れのような仕事のミスを防止するために、一層の注意を払える、あるいはイレギュラーを無くすような活動ができる。
- 取引の流れを把握できていれば、問題が発生した箇所を特定しやすくなり対策も立てやすい。
以上のように、業務の改善や効率化を図ることができます。
今回は、仕入と経費、すなわちモノやサービスを購入するという取引の流れ(業務フロー)についてお話していきます。
仕入及び経費の業務フロー
1.発注
何かモノやサービスを買うときには、まず発注(注文)というアクションが必要になってきます。具体的には
- 直接お店に行って「これ下さい」と言って発注する
- インターネット販売においてはホームページやアプリから購入するモノや個数を入力して、レジに行って購入のための操作をする
- 電話で商品を送るよう依頼する
- ファックスで注文書(売主の指定する書式に記入することもある)を送信する
- メールで注文する(ファックスと同様に売主の指定する書式に入力したり、売主の指定する情報を記入したり)
と、様々な注文方法があります(注文する企業によりけりですね)。
お店に行って買い物をするときのように、注文・受取・請求受け・支払がほとんど同時に行われる場合には、注文というアクションを特に意識することはありませんが、注文してから、注文したモノを受け取るまで時間が空くようなものについては、注文したことの証拠(メールの控えなど)を保存するようにします(多くのインターネット販売では特に注文書をプリントアウトしたりしなくても、注文履歴が残るので便利です)。「注文したのに届かない」場合に、注文の証拠を残すことで解決を図りやすくするためです。
業種によっては、注文すると「注文請書」をもらえます(建設、リフォームに多い)ので、保存しておきます。
なお、注文しただけでは、とくにお金やモノ・サービスが移動するわけではありませんから、会計処理(会計ソフトへの入力)はしません(「仕訳なし」です)。
2.入荷(受取)
注文してから少し時間が経過し、モノを受け取ったり、サービスを受けたりします。
受け取る際には、注文したとおりかどうか、注文書の控えなどを参照しつつ確かめます(「検収」という作業です)。
モノを受け取ったときには通常、納品書をもらえます。納品書はモノを買ったことの証拠になるので、保存しておくとともに、納品書の金額に基づいて会計ソフトに仕入れたこと(あるいは、経費としたこと)を入力します。
「納品書」というタイトルが付されていなくても、モノやサービスを受けたことを証拠づけられる書類(例えば「お買い上げ明細書」など)は通常あるので、保存しておきます。
会計ソフトへの入力(仕訳)は、後日の支払になる場合には
(借方)仕入(又は経費を示す適当な勘定科目) ○○○円 (貸方)買掛金(経費の場合「未払金」)○○○円
受取りとともに支払う場合(代引きの場合)は
(借方)仕入(又は経費を示す適当な勘定科目) ○○○円 (貸方)現金 ○○○円
となります。
3.請求書の受け取り
モノを受け取ってからしばらくすると、請求書が到着します(複写式で納品書についてくる場合も多いです)。請求書には通常であれば「支払期限」が明記されているので、支払期限までに支払う必要があるのですが、以下の点を意識します。
- 請求書の「内訳(請求内訳)」を見て、受け取った(仕入れた、購入した)ものではないものが混入していないかどうか把握する → 受け取っていないものについては(前金制でない限りにおいては)支払う必要は無いので、支払いません。可能であれば請求書の差し替えを依頼します。受け取ったもののみについて支払うようにします。
- 請求書に基づく振込み(支払い)は、請求書を受け取ったその都度ではなく一度にまとめて行うようにします。その都度払うよりも効率的に支払事務をすすめられるからです。当事務所でも家賃、セミナーや研修の受講料、書籍代、備品代などの請求を受けますが、まとめて月末日近くの一定の一日に振り込むようにしています。たとえば、請求書の支払期限がほとんど月末日で、わずかに月末日以外の支払期限の請求書があるならば、支払期限を月末日にしてもらうよう交渉するのも手です。
- 支払期限までは支払わなくても良いので、支払期限まで支払いません。支払期限まで支払いが猶予されている(ことに伴う資金運用の自由度のある)ことを「期限の利益」といいますが、期限の利益を享受するようにします。
4.支払(決済)
請求書に基づいて支払いを行い、支払の事実を会計ソフトに入力します。先にモノやサービスを受け取っている場合、支払の仕訳は次のようになります。
(借方)買掛金(又は「未払金」)○○○円 (貸方)現金又は預金 ○○○円
また、二重に支払わないようにするために、支払済みの請求書には「○月○日支払済」のように、支払済みであることを請求書に書いておきます。
会計ソフトによっては、買掛金の消し込みといって、買掛金と支払金額をマッチングさせ、一致すれば買掛金を消せる(借方計上できる)機能もありますので、活用しない手はないといえます。
支払の終わった請求書は、取引の証拠書類として保存しておきます。
まとめ
以上のように、モノやサービスを購入する取引は、流れが一貫していて、まとめると、
発注→入荷(受取)→請求書の受け取り→支払(決済)
となっています。
購入するモノによっては入荷と支払が同時だったり、入荷と請求書の受け取りが同時だったりと、それぞれの段階の時期や間隔、タイミングが異なったりしますが、最終的には支払(決済)にたどり着くことになるので、支払(決済)をまとめてできるよう、そろえる工夫をすることが効率化の第一歩です。
また、支払(決済)方法も、現金払い、クレジットカード払い、銀行振込などいろいろな方法がありますが、効率化のためにはなるべく統一を図ることも必要でしょう。
クラウド会計の(クレジットカードやネットバンキングの明細の)同期機能をフル活用するには「現金払」を極力無くすのも手です。
そして、流れに沿って業務を進めれば、モノを受け取っていないのに支払ってしまった、請求を受けていないのに支払ってしまった、モノが届かないといった、ミスや遅滞の防止にも役立てられるので、業務フローを把握するようにしましょう。
(本投稿の執筆時間 100分)