取引の流れ(業務フロー)を把握する、整理する:売上

売上の業務フロー

昨日の続きとして、今日は売上の業務フローについて解説していきます。

仕入や製造、研究開発、広告宣伝、販売促進などの諸活動は、売上を獲得するために行われます。売上を得ることは、こうした諸活動の成果といえます。

売上は、業種や企業により、業務(なされる手続き)のスタイルは異なるものの、

  1. 顧客から注文を受ける(受注)
  2. 顧客にモノ(商品や製品)を引き渡す、あるいはサービスの提供を完了する
  3. 顧客に代金を請求する
  4. 顧客から代金が入金される

という一貫した流れ(フロー)があります。

受注

注文を受けることです。

小売業やまちなかの商店に見られるいわゆる現金商売では、受注(「これください」と購入の意思表示を受ける)・引渡(お客様に商品を引き渡す)・請求(「(代金)○○円頂きます」とお客様に言う)・入金(お客様から代金を受け取る)が同時に行われるので、一つ一つを意識することは少ないと思われますが、そうではない場合、例えば受注生産のように、受注を受けて少し時間を置いてから引き渡すような場合には、これらを分けて捉える必要があります。

受注業務としては、

  • お客様から注文書を(メールやFAXなどで)受け取る
  • インターネット販売の場合は、お客様が入力した注文データが到着する
  • お客様から電話で注文を受ける
  • (建設やリフォームによく見られるが)注文請書をお客様に渡す

が考えられます。

建物の賃貸借契約のように、一度(部屋を)引き渡したあとは、継続して貸すことに対応するかたちで契約にしたがって入金があるのみ、という場合は、受注は契約開始時のみとなります(毎月請求することも見受けられますが、毎月の請求をすることなく「継続的な貸与→入金」を繰り返すこともある)。

注文書など注文したことを示す書類は、注文を受けたことの証拠として保存しておき、

  • 注文を受けたにもかかわらず、顧客に提供しなかったなどのミスを防止したり、
  • 注文を受けたけれども、対応する売上が会計ソフトに記録されていない理由の調査の材料にしたり

します。受注状況の管理をすることにより、その後のトラブルやミスを防止することに役立てるのです。

モノの引渡し又はサービスの提供完了

販売するものが「モノ」の場合

顧客に商品や製品を引き渡すことにより、売上が成立します。

どのタイミングで「引渡し」を判定するかは、各業界の商慣行にもよりますが、

  • 顧客による検査(検収)の終了
  • 顧客の受領印のある納品書の控えの受領
  • 運送業者に引渡し、その控えの受領

など、顧客にモノを提供し、かつ顧客が提供されたモノを受け入れたと認められる時点で判定します。これは、代金を請求することのできる状況になったタイミングともいえます。

引渡しの証拠書類として、受領印のある納品書の控、検収書、運送業者の控え、小売業におけるレジシートの控えなどがあります。

販売するものが「サービス」の場合

顧客へのサービスの提供を完了したとき、売上が成立します。サービスの提供を完了すると、一般的には、顧客がサービスを受け入れた状態となり、代金を請求することのできる状況となるためです。

世の中には様々なサービスがありますが、サービスの提供を示す証拠としては、作業完了報告書や工事完了報告書のような、顧客が完了を認めてサインした書類があります。

顧客がサービスを受け入れたことを直接立証する資料とはいえませんが、企業内部における証拠書類として作業日報、作業報告書のようなものは、販売活動を説明する資料として重要です。

会計ソフトへの入力(売上の記帳、記録)

引渡し又はサービスの提供完了を受けて、会計ソフトに売上の入力をします。売上代金の入金が後日になる場合には、

(借方)売掛金 ○○○円 (貸方)売上 ○○○円

とし、売掛金という「(入金は後日だが)売上代金を請求できる権利」を記録しておくことになります。

引渡し又はサービスの提供完了と同時ないし同日に入金もある場合は、

(借方)現金 ○○○円 (貸方)売上 ○○○円

となります。

請求

売上代金の入金が後日になる場合、請求を忘れないようにしましょう。

多くの場合、請求書が無ければ、代金を払ってもらえません(建物の賃貸借契約のように契約書上、支払い期日が明記されていれば別ですが)。業界にもよると思いますが、一般的に慣習として、請求書がないということは、代金の支払いを(無期限に)猶予されていると解釈されることを意味します。

支払期限を明記した請求書を必ず顧客に渡すようにしましょう。手元には請求書の控えを残し、支払期限が到来した後に未入金のものがないかの確認に使用します。

クラウド会計ソフトによっては、請求書のデータを売掛金の残高として顧客ごとに管理し、入金があったときに顧客ごとにマッチングさせて残高を減額させる(消し込む)ことができ、効率的な請求管理ができます。

また、入金管理を効率的にできるように、支払期限を月末日など一定の日とすることも考えられます。

入金

支払期限に入金があるかどうか確かめます。入金の管理は企業経営のもっとも重要な部分、期限までに入金が無ければ、期限の翌日に顧客に連絡して入金してもらうよう依頼します。

売掛金がある状況では、入金時にも会計ソフトに入力します。

(借方)現金(現金で回収の場合)又は預金(振込の場合) ○○○円 (貸方)売掛金 ○○○円

期限までに入金の無い得意先については、得意先の状況にもよりますが、売上代金が回収できないという事態を避けるため、情報を集めて、取引条件の変更などの対応策を検討することも必要となります。

まとめ

売上の流れ(フロー)を説明してきましたが、受注→引渡し又は提供完了→請求→入金の流れ方(業務の具体的なスタイル)は、取り扱うモノやサービスによって様々です。

一つの企業のなかでも、多岐にわたるパターンが存在する場合があります。一度、どのようなパターンがあるか、記述して整理し、なるべくパターンを少なくする工夫(できる限り統一する工夫)をしていくことで売上業務を効率化できます。

特に、請求から入金にいたるまでは、どんなパターンであっても共通するので、入金の管理を効率的にできるよう、請求日を統一できるなら統一する(ただし、請求もれを起こさないよう、引渡しと同時に請求書を渡すことも考えられる)とか、支払期日を統一するという工夫をします。

売上を得ることも必要ですが、売上は代金を回収し終えるまでが業務です。

2回に渡って、業務フローについて書いてきましたが、業務の無駄を無くし効率化を図ることのできるよう、業務フローを(頭の中にしまいこまず)書き出してみることをおすすめします。目に見える状態になれば、どこに問題点があるか分かりやすくなります。

(本投稿の執筆時間 75分)

 

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