invoice(インボイス)って何?

英和辞典で調べてみると

invoice(インボイス)、外資系企業に勤めている方や、外資系企業と取引のある企業には馴染みのあるものと思いますが、外資系企業と関わらないで仕事をしている方にとっては”?”って感じかも知れません。

監査業務で仕入れや経費の納品書綴りや請求書綴りをめくっていると、たまに”invoice”という英語の証憑が出てきて、日常的に英語に触れていない私は「これって何」と戸惑ったこともありました。

このinvoice、英和辞典(手元の電子辞書CASIO EX-word(2004年に購入)に内臓のジーニアス英和辞典)で引いてみると、「送り状」「仕切り状」「仕入れ書」と書いてありました。Google翻訳に入力すると「請求書」と出てきます。

インボイスとは請求書に代表される、納品書や仕切書を含んだ概念の書類で、購入代金の請求権を示す証拠書類といえるでしょう。

現行の実務でも請求書等の保存は必要

ところで、消費税の計算において、仕入税額控除、すなわちお客様から預かった消費税から仕入先その他の取引先に支払った消費税(仕入税額)を差し引く計算をするためには、請求書等(「等」には領収書、納品書、レシートなど取引の事実が明らかになっている書類が含まれる)を保存することが、現行の実務でも必要になっています。

もっとも、消費税法は、消費税額を適正に計算し、計算内容を立証できるようにするために請求書等を保存するよう求めていますが、そもそも会計実務(経理実務)において、取引の証拠となる書類を保存することは必要なので、消費税法の規定を意識せずとも必然的に保存が求められるといえます(もっとも、保存年数については(大まかにいえば)会社法で10年、法人税法や消費税法では7年と規定されている)。

2019年10月の税率引き上げとともに「区分記載請求書等」の保存が必要になる

2019年10月から税率が10%に引き上げられるとともに、軽減税率(8%)が導入され、税率が複数になります。そこで、複数税率のもとで消費税額の計算を適正に行えるようにするため「請求書等」に記載する必要のある項目が増えます。

本来であれば複数税率になると同時に一気に(後ほど述べる)インボイス(適格請求書等)としたいところと思われますが、激変を避けるため、2019年10月から2023年9月までは過渡的に「区分記載請求書等」として、記載項目を少し増やす程度にしています。

この「区分記載請求書等」には、現行の請求書の記載項目に加えて、次の項目を記載することとなっています。

  • (軽減税率の対象品目があれば)軽減税率の対象品目である旨
  • 税率ごとに合計した対価の額(税込)

これによって、税率ごとに区分した会計処理(経理)が可能となります。

2023年10月から保存が必要となる”インボイス(適格請求書等)”

さて、消費税の計算における「インボイス」は正式には「適格請求書等」と呼ばれます。インボイスには、「区分記載請求書等」の記載項目に加え、次の項目の記載が必要になってきます。

  • 登録番号
  • 税率ごとの消費税額及び適用税率
  • (対価の額については、税抜又は税込で記載する)

まず、登録番号とありますが、インボイスを発行するには税務署に申請をして「登録」をしなければならなくなります。登録申請は2021年10月からとなります。

仕入税額控除をするためのインボイスは登録をしなければ発行できないという、かなりの手間が生じることとなります。これは、仕入税額の集計をインボイスに記載された「税率ごとの消費税額」の集計によることが原則となるからです。

そして、インボイスには税率ごとの消費税額を記載することになります。

インボイスの役割は、消費税の納税額の計算を適正に行えるよう「売り手が買い手に対して適用税率と税額を伝える」こととなります。

さらに、インボイスを発行するための登録は、課税事業者しか受けられないこととなります。免税事業者は登録を受けられず、登録を受けられないということは、免税事業者はインボイスを発行できないということになります(課税事業者を選択して登録を受けることは可能)。

免税事業者は消費税を納めないこととなっているため、消費税の負担者が消費者であることから、理論的には、免税事業者に消費税を支払うということにはならず、預かった消費税から課税事業者である取引先に支払った消費税だけを引いて、残った預り消費税を納めることになります。

免税事業者の手元に消費税相当額が残るという「益税」問題に対応する施策といえますが、インボイスを発行できない免税事業者が、取引(経済活動)から排除される可能性があるといえます。

免税事業者がインボイスを発行できないという激変を緩和するため、2026年9月までは免税事業者からの仕入税額相当額の80%、2026年10月から2029年9月までは同50%を仕入税額控除できることとなっています。

免税事業者(基準期間(前々年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者)も(消費者ではなく)事業者であることに変わりはなく、その上、今後は複業、パラレルキャリアの浸透によって個人事業主やフリーランスが増加する傾向にあります。上記の緩和措置の間までに、免税事業者が不利益を被らないような施策を立案する必要があると考えます。

※本投稿の意見にわたる部分は私見です。実務に適用するに当たっては、個別具体的に公認会計士・税理士等の専門家にご相談の上、ご判断頂けますようお願い申し上げます。

【一日一新 Today’s New Things】

4月18日

  • スターバックスコーヒー アールグレイミルククリームドーナツ
  • 新しい傘を購入(今朝は雨のため、2年前に購入したビニール傘を差して事務所へ歩いたところ、サビかかっていた傘の中心部分の骨が3本一気に外れてしまった。

(本投稿の執筆時間 90分)

(2023.9.27追記)インボイス制度がまもなく開始されます。免税事業者の方向けに、インボイスの発行登録をどうするかなどについて投稿しました。リンク先をご参照ください。

Follow me!