公認会計士の特徴かつ特長〜タカモト的目線で(後編)

将来を予想する、トレンドを読む

私も含め、公認会計士は、将来を予想するのが好きで得意じゃないかと思っています。経済がどう動くのか、社会がどう変化していくのか、企業の経営はどのようになっていくのか。

こうしたことを予想するのもそうですが、未来を先取りした体験をするのも好きなんじゃないかと思います。AI、IoT、RPA、ブロックチェーンにビットコインなど、側から見ても、最先端のものに触れている人は多いですね。最先端のものに触れると、その次を想像したくなる上、楽しいですから。私も、Amazon EchoやGoogle Homeを導入したり、iPhone Ⅹを使うことはしています。

実務上も、クライアントの事業計画に目を通し、事業計画の作成に合理性があるか、適切な意思決定を経た上での作成になっているかを検討します。

税効果会計における繰延税金資産(平たくいえば、将来節税できるという「割引券」の一種。)の回収可能性(「割引券」が無効になってしまわないかどうか)の検討の際、将来の事業計画(利益計画)に合理性があるかどうか検討します。合理性がなければ、繰延税金資産という「割引券」の評価も適正にできません。「割引券」は将来利益が出ることが合理的に見込まれてはじめて使えると見込まれるからです。

この「繰延税金資産」のように、決算書の世界には、将来の見積りによって数字を決定する要素がたくさんあります。見積りが合理的にできてはじめて、決算書が適正になるといえます。

貸借対照表に計上される貸倒引当金とか賞与引当金、退職給付引当金もそうです。現在までにその発生原因がある将来の負担額を見積もるのです。

公認会計士は、実務上、将来を見積る(見積りが妥当かを検討する)機会が多いことが、将来の予想が得意になったり、好きになることにつながっていきます。

品質にこだわる

公認会計士は、自分の仕事の「品質」にこだわる人がほとんどです。

「品質」へのこだわりは自分の仕事に対してのみならず、普段身に付けるものや、持ち物、食べ物の質にこだわりを見せる人も多いです。

監査法人についていえば、どの監査法人にも「品質管理部門」すなわち、クライアントのみならず社会的に要請される一定レベル以上の仕事を各監査チームが遂行しているか、監視、チェックする部門があります。

公認会計士の団体である日本公認会計士協会としても、品質管理については常に主張しているところです。「公認会計士=品質にこだわる」といってもいいです。

業界に入って監査法人に入ったあと新入所員研修を経てすぐに、監査の現場に投入されましたが、そこでは、作成した監査調書(担当する勘定科目などの妥当性を検証し結論づけるレポート)のレビューを受けます。上司(現場監督を意味するインチャージ、管理職を意味するマネージャーや監査の最高責任者であるパートナー(業務執行社員))からかなり厳しい突っ込みを入れられることが多かったです。

これを繰り返し、いやでも、仕事の完成度を高めようとし、それが習慣付きます。

ついでながら、公認会計士試験は医師国家試験、司法試験とともに三大国家試験に入るとされています。難関試験をくぐり抜けたというプライドもまた、仕事の完成度を高めようとするモチベーションにつながっています。

公認会計士は、品質にこだわります。

ロジカル

公認会計士は、総じてロジカルです。なぜその結論になるのか、論拠や理由を明確に示して、論理構成をしっかりさせながら考え、話し、書きます。

公認会計士試験に合格して最初のキャリアは監査法人という人が多いのですが、それに限らず、上場企業や、大規模な税理士法人からキャリアをスタートする人もいます。

私がキャリアを始めた監査法人(中央青山監査法人)もそうでしたが、監査調書にはデータの裏付けだけでなくロジカルさが求められるとともに、論拠立てがうまくいかなければ相当怒られるとともに何度でもやり直しさせられます。

会計監査六法(私がキャリアを始めた頃は「監査小六法」)を開いて、会計基準の文言を咀嚼し、意味を解釈し、事実に当てはめて結論を出すのですが、根拠条文も明確にしなければなりません。この経験は、税理士として仕事をする時にも、税法の条文や、国税庁の通達を読んで判断するという習慣につながっています(税理士は、税法という法律の解釈と適用を扱うことから、弁護士に近い職業といえます)。

さらに、監査現場の先輩方が、マネージャーやパートナー、クライアントの役職者と話すのを聞いて、話し方を吸収します(盗みます)。監査調書と監査現場は宝の山と仰る先輩もいました。ノウハウを盗み放題です。

上場企業や大規模な税理士法人も、仕事にはロジカルさが求められるはずです。公認会計士はこうしたロジカルシンキング、ロジカルトーキング、ロジカルライティングを日常的に経験します。

そうして、公認会計士は総じてロジカルになっていくのです。

スマートかつ効率的

公認会計士は、スマートな人が多いです。立ち居振る舞いから外見・ファッション、話し方まで、スマートな人が多いです。私はどちらかといえば「暑苦しめ」なので、スマートな人に憧れるとともに、スマートになりたいと思っています。

さらに、無駄なことをしない主義の人が多いように思います。仕事でも、極力プリントアウトしないで済ませるとか、無駄な作業と分かったらやめるとか、無駄な買い物をしないような人が多い印象を持っています。

これは、「重要性の原則」という実務の原則を仕事で常に求められるからなのではないかと思っています。決算書全体に影響を与えうることについては、徹底的にその当否を明らかにしようと必死に仕事をしますが、決算書全体にあまり影響を与えない(重要性が乏しい)ものについては、やりません。捨てています。

思い返せば、公認会計士試験を受けた時もそうでした。みんなが出来る問題は絶対に落としてはならない。必死に解く。一方で、みんなできそうに無いようなレアな問題は、思い切って捨ててもいい。

試験と実務を通して、無駄な(重要性の乏しい)ことはしない。これが、公認会計士のスマートさと効率性をつくっています。

勉強熱心、研究熱心、向上心が強い

そして最後に、公認会計士は、勉強熱心、研究熱心。向上心が強いです。

どの業界にも、勉強熱心で研究熱心で向上心の強い人は少なからずいます。そうした人が経営する会社、そうした人が経営するお店は、程度の大小はあるも、うまくいっています。

公認会計士については、勉強や研究をし続けることが、業界の文化になっています。その文化は、先輩方から脈々と引き継がれているのです。

公認会計士であり続ける以上、いや、公認会計士でないとしても、人間、死ぬまで、墓場に入ってもなおやる勢いで、勉強していくものではないでしょうか。私は、墓場に入ってもなお勉強だと信じています。

まとめ

公認会計士の特徴と特長、「強み」を2回にわたって綴ってみました。

振り返って思うのは、業界に入りたての頃、右も左もよくわからず、私は決して要領のいいほうではないこともあって、ミスをしては怒られることの繰り返し、怒られたことしかないほどに怒られたものです。もちろん、要領よくソツなくやってあまり怒られることなくキャリアを進めた方もいますが。

一方で、私の場合はもしかしたら、怒られまくったからこそ、仕事の質にこだわる、こだわり続けているのではないかと思います。仕事に対するプライドを失くして「こんなんでいいでしょ」的な仕事を提供するのは心の底から嫌です。そんな人間にはなりたくありません。

これまでの様々なおつきあいを通して、業界を問わず、良い仕事もいっぱい見て触れてきましたし、その逆で「自分はこんな質の低い仕事はしたくない」という仕事も見てきました。世の中はたくさんの仕事で成り立っています。これからも様々な仕事を見て触れて、良いと思ったものは取り入れながら、自分を磨き続けたいです。

公認会計士や税理士の仕事は、建築家や大工、芸術家のように、後世に形が残る仕事ではない、無形の仕事と思っています。しかしそうであっても、日々ベストを尽くして、世の中に良い仕事、品質の高い仕事を残して行きたいと思っています。

(本投稿の執筆時間 100分)

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