消費税の概略その4~預かった消費税から差し引く支払った消費税の計算(仕入税額控除について)

前回の投稿の続きとして、課税売上割合を仕入税額控除にどう使うか、というお話しをします。

仕入税額控除とは、預かった消費税から支払った消費税を差し引くことです。この、仕入税額控除できる税額というのは、預かった消費税と支払った消費税との対応関係が前提になります(損益計算書における費用収益対応の原則に似ています)。

預かった消費税(=課税売上によって預かった消費税)に対応する支払った消費税とは、課税売上のために購入したものにかかった消費税、ということになります。売上には購買と同じように、課税売上、非課税売上、免税売上(輸出免税)、不課税があります。このうち、課税売上を獲得するために購買したものの消費税を控除できる、ということです。

そして、購買したもののなかには(業種にもよりますが)、課税売上を獲得する目的とは限らず、課税売上以外の売上を獲得する目的を兼ねたものも現実にはあります。

例えば、株式会社を前提とすれば、損益計算書上、販売費および一般管理費に分類されるような、事務所の家賃や事務機器がそれに該当します。もちろんこれらは、主たる売上(課税売上とみなしてOKです)を獲得するのに役に立ちますが、たな卸資産(販売の直接的目的となるもの、商品や製品)のように売上に直結するとはいえず、財務活動として入金される受取利息(非課税売上)や受取配当金(不課税)の獲得にも貢献するものと言えます。

このような課税売上と課税売上以外の売上に共通して貢献する購買のことを(課税売上と課税売上以外に共通する購買、という意味で)共通仕入と呼ばれます。この、共通仕入については、課税売上割合を乗じた金額を、課税売上に要した「支払った消費税」として、預かった消費税から控除することとなります。

以上をまとめると、原則的な仕入税額控除できる税額の計算は、以下の通りになります。

仕入税額控除できる(支払った消費税の)税額=課税売上を獲得するために購買したものの支払った消費税
+(課税売上割合×課税売上と課税売上以外の売上の双方を獲得するために購買したもの(共通仕入)に支払った消費税)

これを「個別対応方式」といいます。個別対応方式において重要なこととしては、課税売上以外の売上のみを獲得するために購買したものの消費税は、預かった消費税からは差し引けないということです。損益計算書上は費用とされます。

個別対応方式は、多くの場合、節税につながりやすいのですが、かなりの事務作業を要してしまいます。購買したものが課税売上のみに対応するのか、共通仕入れか、あるいは課税売上以外の売上のみに対応するのか、ひとつひとつ判別する必要があるからです。

この個別対応方式に代え、やや簡便な方法として「一括比例配分方式」という計算方法を選択することもできます。その計算式は、

仕入税額控除できる(支払った消費税の)税額=課税売上割合×支払った消費税の金額

一括比例配分方式のポイントは、支払った消費税の金額の全額を、課税売上割合分だけ、預かった消費税から差し引くというもので、購買した物の売上との対応関係について分別する手間がかからない反面、課税売上のみに要したことが明らかな購買についても、その消費税のうち(1-課税売上割合)分を預かった消費税から差し引けないということです。

しかも、一括比例配分方式を選択すると、2年間は継続して適用しなければなりません。個別対応方式でいくか、一括比例配分方式で行くか、翌期以降2年分の納める税額をシミュレーションして決める必要があるということです。

さて、小規模な企業には、事務作業を軽減するために一定の条件をクリアすれば、簡略な方法が認められます。

一つは、基準期間(個人の2年前、法人の2事業年度前)の課税売上高が5,000万円以下の企業に認められる簡易課税制度(参照:消費税の概略その2~原則課税と簡易課税

もう一つは、当年または当事業年度の課税売上高が5億円以下であり、かつ課税売上高が95%以上の場合には、支払った消費税を全額差し引くことができるというものです。個別対応方式か一括比例配分方式か選択する必要もなく、小規模企業に配慮された方法といえます。

課税売上割合が95%未満の場合または、課税売上割合が95%以上であっても当年または当事業年度の課税売上高が5億円超の企業は、原則的な計算方法(個別対応方式か一括比例配分方式の選択制)によることになります。

そして、そもそも、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であり、かつ基準期間の次の課税期間の開始から6か月間(特定期間といいます)の課税売上高又は給与の額が1,000万円超でなければ、消費税の納税が免除されます(免税事業者)。手元に、お客様から預かった消費税と取引先に支払った消費税の差額が残って、もうかる形になってしまいますが(益税と言われます)、零細な企業の事務負担を軽減する観点から規定されているものです。

(本投稿の執筆時間 58分)

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