「残業できるスキル」は、絶対にスキルセットに含めてはならない。
そもそも「残業できるスキル」はスキルなのか?
スキルセットとは、業務を遂行するための技術と知識と経験のセットです。
例えば、技術ならばPCの操作スキル(表計算やプレゼン資料作成や写真編集やHP作成など)や、決算書・税務申告書の作成スキルや、論理的思考スキルなど。
知識ならば、会計や税務や経営の知識(直近の研修の受講内容や読書内容)。
経験ならば、今までに実施してきた実務経験(会計監査や税務相談や講師)、となります。
このようなスキルセットを用いて業務を遂行するわけですが、ここで、そもそも「残業できるスキル」というのは「スキル」なのでしょうか。
監査法人に勤務していた頃には「残業できるスキル」がもてはやされる傾向もあり(執筆日現在の最新状況は分かりませんが)、「自分は(何時間でも残業できる)サイボーグだ」と自慢げに話していた会計士もいましたが、「残業できるスキル」がスキルなのかどうか、強く疑問を感じていました。
ビジネスにもスポーツにも、合理的とは言えない(ビジネスは本来合理的なもののはずですが)根性論や精神論がまかり通っていた時代〜働き方改革が始まる前の時代〜には、残業できるスキルはスキルとして大手を振るっていたようですが、
今では「残業できるスキル」はスキルではない、というのが私の意見です。
残業できるスキルとは、残業できるだけの強靭な体力とメンタルの強さがあるということですが、
そのような強靭な人間が、残業をしないで体力とメンタルを温存し有効活用しながら業務をするならば、残業をした場合に比べてさらに高い生産性と効率性をもって、最大のパフォーマンスで業務を遂行できると考えられるからです。
科学的なエビデンスは持ち合わせていないものの、経験則として上記のようにしか思えないところです。
残業をするというのは、潜在的なパフォーマンスを顕在化できなくなるリスクが非常に高いという点を持って、残業できるスキルをスキルとしてはいけない、スキルセットに含めてはならないと思うところです。
理由1:残業によるストレスと疲労で体調を崩す
さらに、「残業できるスキル」をスキルセットに含めてはいけない理由として、残業はストレスと疲労の蓄積を通して体調を崩すことにつながるためです(体力とメンタルは個人差があるものの、強靭な体力とメンタルの持ち主であっても、残業によって本来あるべき高いパフォーマンスを発揮できなくなっていると考えられます)。
人によっては、体調を崩すことを通り越し、過労死をしてしまうこともあります。健康やパフォーマンスに与える影響を考えると、「残業できるスキル」はスキルセットに含めてはならない、としか思えません。
理由2:残業は効率化や生産性向上の妨げになる
もうひとつは、「残業できる」と思ってしまうと、納期(締切)に間に合えば時間はいくら使ってもいいや、と意識的か無意識的かにかかわらず思ってしまい、効率化や生産性向上へのモチベーションが下がり、その結果効率化や生産性向上が図れなくなってしまう傾向があるからです。
ビジネスはスポーツと同じようなものだと常々思うところですが、例えば、制限時間のあるラグビーやサッカーは、制限時間内に相手チームに勝利するために、徹底的に作戦を練って実行します。
もし、制限時間がなかったらどうでしょうか。制限時間内に勝つための作戦を考えて実行する、というモチベーション自体が下がってしまい、もしかしたら勝つ可能性も下がってしまうのではないでしょうか。
自分がやっているマラソンにおいても、マラソン大会には制限時間があり、制限時間内に走り切るにはどのように走ればいいか、トレーニングすれば良いか、考え抜かなければなりません(マラソンは頭を使わないと走れません)。
これらスポーツと同じで、ビジネスにおいても、「制限時間」を守らず残業に頼ってしまうと、効率化や生産性向上のために考え抜くというモチベーションが下がります。
それは、イノベーションの阻害要因にもなりかねません。
イノベーションの連続的な発生を促すためにも、「残業できるスキル」をスキルセットに含めては絶対にいけない、と言うのが私の意見です。