税務の素人にとって法人税申告書が分かりやすくなれば起業へのハードルをさらに下げられると思い
税理士事務所に勤める前から読んでいたこの本を、最新版で読み直しています。
簿記が分かっていれば、この本は、申告書の書き方の初歩をとても分かりやすく解説しているので、申告書を自力で書く起業家の方にもおすすめします。
専門家にとっても、法人税の申告書やその書き方について、いかに分かりやすく税務や経理の素人に説明するか工夫するための材料として、おすすめできます。初歩(基礎)こそ重要で、一層分かりやすく説明できる必要があると感じ、私もたまに読み直します。
会社(法人)として起業する人で、法人税申告書の作り方や、申告書の理解に必要な専門用語を知っている人は少ない気がします。法人税申告書を税理士に依頼せず、自力で作成する起業家もいますが、まだまだ少数派だと思います。
会社法が施行されて(合同会社制度の創設や、資本金1円でも設立可能なこともあり)会社の設立はしやすくなり、また小規模なビジネスならば、税率が15%に軽減されているので(課税所得が年800万円までの部分)、会社として起業するハードルは、10年程度前に比べると随分下がったと思います。
しかし、法人税の世界では今もなお専門用語が飛び交います。益金、損金、所得、留保、社外流出、損金経理、損金不算入といったように。
申告書自体も税務や経理の素人には、複雑極まりないものに見えると思います。慣れの問題と一言で片付けてしまえばそれまでですが、申告内容がすっと理解できるよう、申告書の様式もより分かりやすいものに変える必要があるような気がします。
専門用語がなくなり、申告書の様式が分かりやすくなれば、起業へのハードルもさらに下がるものと思います。
一方、私のような専門家の役割は、専門用語を日常の言葉に置き換え(翻訳し)、申告書の様式はそのままだとしてもその様式を誰にでも分かるように解説することにあります。
例えば、専門用語の置き換えでは、
所得→税金計算上の利益で、損益計算書の利益から導いて計算するもの(税金は損益計算書の利益に税率を掛けたものではなく、税金計算で考慮されるものを利益から引いたり、逆に考慮されないものを足したりして求める数値で、これに税率を掛けて税額を求めるというもの)
損金→税金計算の上でも経費として売上から引けるもの。法人税計算上の経費
損金不算入→損益計算書上は経費(費用)であっても税金計算の上では経費として引けないもの(だから別表4で加算する)
損金経理→損益計算書に経費(費用)として載せること
例えば、社長が一人だけの会社のように、申告内容が比較的簡単なものであれば、わざわざ専門家に依頼しなくとも自力で書ける程度の難易度に下げられるよう、制度としても改善を国や自治体に求めつつ、専門家として分かりやすく解説できるよう努力を続けていきます。
なお、複業が普及しフリーランスが増えるこれからの日本社会において、会計や税金の知識の重要度は増すと思いますが、初等中等教育における会計や税金の教育は十分では無く、現在の会計リテラシー、税金リテラシーの不足の要因になっているようです。会計や税務の教育については、別な機会に書きたいと思っています。
(本投稿の執筆時間 50分)