財務分析の基礎〜過大になっていないか〜

企業経営において、利益やキャッシュ・フローに見合わない、過大な設備投資になってしまうということがあります。その過大な設備投資の原資を借入金によって賄っているならば、借入金が過大ということになってしまいます。

そうならないようにするために、事業計画をたてる必要があり、その事業計画において、キャッシュ・フローと設備投資の関係を明らかにするに必要があります(予想キャッシュ・フローは売上高と利益の予想に基づいて算定)。つまり、キャッシュ・フロー何年分で設備投資額を回収できるのか、言い換えれば、設備の使用可能年数にわたって獲得できるキャッシュ・フローで設備投資に見合った借入金を返済できるのかどうかを、見極めるわけです。

設備の使用可能年数にわたるキャッシュ・フロー合計=>設備投資額=借入額

となるように計画します(単純化のため時間価値を反映する割引計算についての説明は、ここではいたしません)。

計画は経営の羅針盤となるため必要ですが、環境の激変する現代、当初の計画通りにいかないこともあります。その場合は計画を修正することになります。

計画の修正にあたっても、現状を決算データや財務分析で把握することになりますが、この、借入金が過大になっていないかどうかを見るのに「総借入要返済年数」という指標があります。

総借入要返済年数 = 借入金総額(短期借入金+長期借入金+社債)/(経常利益×50%+減価償却費)

※経常利益に50%を乗じるのは、法人税など利益に基づいて税額を算定する税金を考慮するためです。正確には50%ではないのですが、簡便的に50%を乗じます。課税所得がゼロ以下になるなら(あるいは赤字なら)50%を乗じません。

※減価償却費を加算しているのは、減価償却費は計上された年において支出を伴わない費用、すなわち減価償却費見合いの金額は支出されず借入返済の原資とみなせるためです。

この、総借入要返済年数は、何年分のキャッシュ・フロー(経常利益と減価償却費の合計)で借入金を完済できるかという年数です。投資の対象となった設備の残存使用可能年数以下であれば、問題ない数字といえ、10年以下であれば一般的に良しとされます

(実際には、個別事情を考慮して妥当な数字かどうかを判断する必要がある。例えば建物のように、10年をかなり超えて使用されるものについては、その使用可能年数以下の数字で、なおかつ実際の借入金の約定返済期間以内であれば問題ないと認められる)。

実際の約定返済期間よりも、総借入要返済年数が長くなってしまう場合には、利益計画の見直しと実行、場合により約定返済期間を見直すため金融機関に相談を持ちかける必要があるといえます。

(本投稿の執筆時間 45分)

 

 

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