会計ソフト(帳簿)記録の鉄則。存在するものは全て記録。記録通りに存在する。
目次
存在するものは全て記録されていることと、記録通りに存在すること。
企業の取引を帳簿に記録する鉄則として「存在するものは全て記録されていることと、記録通りに存在すること」があります。
平たくいえば「もれなく記録されていて、記録されている通りに有る」ことです。
この鉄則に則らないと帳簿は、企業の経営実態を適切に表さなくなってしまいます。また、納める税金があるべき金額より過大になってしまったり過小になってしまったりします。
以下「存在するものは全て記録されていること」「記録どおりに存在すること」に分けて説明します。
存在するものが全て記録されているか(もれがないか)=網羅性
存在するもの、つまり存在する実物や取引や事実が、全て記録されていることを網羅性があるといいます。
「もれがないか」ということです。図に表すとこのような感じになります。
実物から記録にあたる、すなわち実物から記録が正しいかどうかを確かめにいきます。
この100(硬貨をイメージした緑色の丸い図形)を、領収書や請求書に置き換えて考えてもいいでしょう。経費になる領収書や請求書をもれなく記録できなければ、利益(所得)が過大になり税金をあるべき金額より余計に納めてしまうことになってしまいます。
図2では、実際には700(100が7個)あるのに、記録は500となっていて、200(100が2個分)もれてしまっています。経費になる領収書に置き換えて考えるならば、経費が200もれてしまっていることになります。記録を700に修正する必要があります。
図3では、記録の方が200(100が2個分)過大になってしまっています。実際には700しかないので、記録も700に修正しなければなりません。
記録通りに存在するか(実際にちゃんと有るか)=実在性
記録されている通りに、実物や取引や事実が存在していることを実在性があるといいます。実際にちゃんと有ることです。図にすると次のようなイメージです。
記録から現物にあたる、すなわち、記録の通りに存在しているかどうか、現物を確かめに行きます。
硬貨をイメージした緑の100を領収書や請求書に置き換えて考えると、記録された通りに経費となる本物の領収書や請求書があるかどうかを確かめる、ということです。存在しない領収書や請求書(取引)が記録されてしまうと、利益(所得)が過小になり、本来納めるべき税金よりも過小な税金を納めることとなってしまいます。
図5では、記録は700になっているのに、実際には600(100が6個)しかないケースです。記録が100多すぎたことが判明したということです。記録した時点では現物がもしかしたら700あったかも知れませんが、調べた結果記録時点でも600しかないことが判明したならば、記録を600に修正しなければなりません。
図6では、記録は700になっているのに、実際には800(100が8つ)あったケースです。記録が100少なかったということです。記録した時点では700しか確認できなかったのかも知れませんが、調べた結果残る100についても記録しなければならないと判断されたならば、記録を800に修正する必要があります。
まとめ〜網羅性と実在性を確保する工夫を
存在する現物、取引や事実から記録にあたって「もれがないか」、記録から存在する現物、取引や事実にあたって「記録どおりに有るか」を意識して、記録したりチェックしたりすることは、企業の経営実態を適切に記録する意味でも、納税額をあるべき金額とするためにも大変重要です。
取引をもれなく記録し、かつ記録したものは確かに有るような帳簿とするには工夫も必要です。例えば
- 売上などの入金は決まった銀行の口座に必ず入金するようにし、その銀行の口座のネットバンキングデータをクラウド会計ソフトに同期する
- 経費などの出金は必ず決まった銀行の口座からの振込や口座振替にして、その銀行のネットバンキングデータをクラウド会計ソフトに同期する
- 経費などの出金は決まったクレジットカードから払うこととし、そのクレジットカードデータをクラウド会計ソフトに同期する(モバイルsuicaも同様に)
- 現金で経費を払うのはなるべくやめて、クレジットカード、電子マネー、銀行振り込みや口座振替にしたいが、止むを得ず現金で経費を払った場合、領収書の入力は支払ったその日のうちか、翌日には必ずする
- 最低でも月末には、銀行の残高やクレジットカードの利用残高を会計ソフトの試算表と合っているかどうか確かめる
- 月次推移を見るクセをつけ、先月まではコンスタントにあったのに今月は無かったり、大きく増減している勘定科目は品目があれば、何かもれていたり、ダブりがあったりしないか確かめる
のような工夫を習慣にすることが大切です。
クラウド会計ソフトの同期機能をうまく活用することで、帳簿の網羅性や実在性を確保しやすくなるといえます。この点からもクラウド会計を推進したくなるのです。