新百合ケ丘への延伸は必要か?~横浜市営地下鉄
神奈川県にとっては辺境の地・川崎市麻生区
横浜市営地下鉄は、横浜の中心部(横浜・桜木町・関内)を中心に、扇を描くように、
- 南西方向に上大岡、戸塚、藤沢市の湘南台まで
- 北西方向に新横浜、センター北など都筑区中心部、あざみ野まで
運行されています。
この、横浜市営地下鉄が、市境を超え、川崎市麻生区に乗り入れ、新百合ヶ丘まで延伸することが横浜市と川崎市で検討されているところです。延伸を求める人も少なくないと思われます。
神奈川県の県庁所在地は横浜市で、その横浜市の中でも横浜・桜木町(みなとみらい)・関内界隈は「県都」としての役割を担っています。
そして、神奈川県の「主流」は東海道。国道一号線と、JR東海道線の沿線の地域が主流たる地域といえます。
川崎市麻生区というところは、小田急線が走っていることから、都心へのアクセスには優れているほうですが、神奈川県という視点でみれば「辺境の地」~「県都」から離れており、「主流」東海道からも離れており、さらには川崎市の中心地である川崎区・幸区からも離れている~といえます。
横浜市営地下鉄が新百合ヶ丘駅まで延伸するならば、都筑区へも新横浜へも横浜へも、乗り換えなしでアクセスでき、同じ神奈川県であるところの「県都」が身近に感じられると思います。私もまた、延伸を期待しているひとりです。
しかしながら、本当に延伸してしまっていいのか、疑問も感じています。
環境と採算をクリアできるならば
ひとつは、地下鉄工事を進めることによって、自然環境、住環境に悪影響を及ぼさないかという懸念です。
川崎市麻生区というところは、ベッドタウンですが、依然として豊かな自然環境と、閑静さが魅力です。その魅力が損なわれてしまっては、意味がありません。
工事に際しては環境への悪影響が生じないか十分に調査を行い、住民への説明も十分に行うことが求められます。
かつて、私の少年期、青年期は今よりも、麻生区はもっと自然環境に恵まれていましたが、宅地化が進みすぎ、緑が減ってしまいました。
空き家問題もクローズアップされ、これ以上の自然環境の悪化、緑の減少は、自分で自分の魅力を削ぐようなものです。
地下鉄の延伸は、自然環境、住環境の保護と両立できるならば、歓迎したいです。
そして、採算がとれるかどうかが、ひっかかります。
これから日本は急速に人口が減っていくことが見込まれています。それにもかかわらず東京都心部とその隣接地域に人口が集中するものの、最後にはその東京都でも、人口が減少するものと思われます。
昨年は川崎市の人口が150万人を突破したことで盛り上がりましたが、都心に通勤することを考えると、川崎市よりも都区内の方が利便性も高く適していると言えます。都心回帰も進んでいます。
現に、麻生区界隈で、都心に通勤する20~30代の独身ビジネスパーソンをあまり見かけませんし、都心の監査法人のクライアントに、非常勤の監査業務に行くと、私以外の監査法人の職員は都区内に住んでいる人ばかりです。
横浜市営地下鉄が新百合ヶ丘に延伸することで、通学旅客と、一定の通勤旅客の乗客数は見込まれると思いますが、地下鉄事業の採算がとれるのか、慎重かつ十分に検討し、楽観的ではないシナリオによっても黒字化が図れるならば、延伸を歓迎したいです。
麻生界隈に人が集まる仕組みづくりがカギ
人口減少、都心回帰と、麻生界隈にとっては厳しい現実が迫っています。
一方で、新百合ヶ丘は、すでに川崎市北部の「金融センター」としての役割を担っているといえます。メガバンクはすべてあり、横浜銀行、八千代銀行、川崎信用金庫の支店もあります。証券会社も野村證券、SMBC日興證券の支店があります。
さらに、優秀な税理士と会計士がすでに多数、事務所を構えています。税理士会の支部が新百合ヶ丘にあり、同業の方とお話しして、その内容とお話しぶりから、そのように感じます。
金融センターという側面と、優秀な職業専門家の存在という側面では、麻生区は起業に適しているといえます。
問題はこれからで、起業が盛んになって、麻生区に仕事にやってくる人が増えるかどうかが、横浜市営地下鉄の延伸のカギになると思います。
イベントという側面でも、アルテリッカに映画祭、しんゆりマルシェ、Vege&Fork Marketなど、集客力の高いイベントがそろっていますが、都筑区、横浜中心部からも一層集客できるようなコトが発生することもカギになります。
麻生区内から「出かけていく」ことも大事ですが、それだけではなく、いかに人を集める仕組みを麻生区につくっていくか―横浜市営地下鉄の延伸と麻生区のまちづくりは、セットで展開していくことが望まれます。
(本投稿の執筆時間 80分)