スキャナ保存、用意するディスプレイにも注意しよう。
目次
2022年1月から特別な手続きなしで可能となった「スキャナ保存」
電子帳簿保存法の改正により、2022(令和4)年1月1日から、税務署に届出書を提出するなどの特別な手続きを必要とせずに、領収書や請求書など取引の事実を証明する紙の原本をスキャナ保存し、紙の原本を廃棄できるようになりました。
スキャナ保存とは、簡単に言えば「領収書や請求書などの紙の原本をスマートフォンのカメラで読み取り、電子データで保存すること」です。
スキャナ保存を行うための要件は複数あり、すべての説明はここでは割愛しますが、最重要かつ最低限の要件をふたつ挙げると
- 領収書や請求書などの受領後、速やかに(おおむね7営業日以内)スキャナ保存すること
- スキャナ保存された請求書や領収書などの電子データが、紙の原本と同じようにはっきりと読み取ることができること
です。受領後速やかに(おおむね7営業日以内)というところがポイントです。受領してからスキャナ保存するまでに時間が空いてしまうと、それだけ領収書や請求書などの改ざんの可能性が高まってしまうからです。かといって、受領の直後にスキャナ保存せよというのは理想的ではありますが、実務上困難であり合理的とはいえません。そこで、落としどころとして「速やかに=おおむね7営業日以内」と、実務上実行可能かつ合理的といえる期間の規定をしています。
なお、スキャナ保存された電子データが、紙の原本と同じようにはっきりと読み取ることができることというのは、当然のことといえます。
14インチ以上のカラーディスプレイが必要なことに注意が必要
電子帳簿保存法の施行規則(正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」)第2条第6項第5号において、以下の通り、ディスプレイの大きさについて要件が定められています。
五 当該国税関係書類に係る電磁的記録の保存をする場所に当該電磁的記録の電子計算機処理の用に供することができる電子計算機、プログラム、映像面の最大径が三十五センチメートル以上のカラーディスプレイ及びカラープリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付け、当該電磁的記録をカラーディスプレイの画面及び書面に、次のような状態で速やかに出力することができるようにしておくこと。
「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律施行規則」第2条第6項第5号
イ 整然とした形式であること。
ロ 当該国税関係書類と同程度に明瞭であること。
ハ 拡大又は縮小して出力することが可能であること。
ニ 国税庁長官が定めるところにより日本産業規格Z八三〇五に規定する四ポイントの大きさの文字を認識することができること。
映像面の最大径が35cm以上とは、インチに換算すると13.8インチ(小数点以下第二位切り上げ、1インチ=2.54cm)になります。つまり、スキャナ保存をするためには13.8インチ以上のカラーディスプレイが必要になるということです。なお、国税庁発行のリーフレットには14インチ以上のカラーディスプレイが必要である旨、記載されています。
映像面の最大径35cmとは、おおむねA4用紙の対角線の長さになります。つまり、法令上は、実務上よく使用されるA4サイズ書類をスキャナ保存しても、そのデータを等倍(拡大縮小無し)でディスプレイに表示できることを求めているということです。
ミニマリストとしては悩ましいが、14インチ以上のノートパソコンか、外付けディスプレイをつなぐか。
リモートワーク、シェアオフィスでのワーキングで仕事をするフリーランスや個人事業主、小さな会社の経営者の方は、仕事にデスクトップパソコンではなく、ノートパソコンを使っている方が多いでしょう。
ディスプレイが14インチ以上であれば問題ありませんが、14インチ未満のディスプレイしか無い場合には、法令に抵触する可能性が生じます。
そこで、14インチ以上の外付けディスプレイを用意するか、14インチ以上のディスプレイのあるノートパソコンに買い換えたり買い増したりする必要が生じてきます。
Macの場合、13.3インチのMacBook AirやMacBook Proでは、別途外付けディスプレイが必要になることとなります。14インチ以上のMacBook Proなら問題ないこととなります。
当事務所では、メインマシンがSurface Laptop 3の13.5インチなのですが、27インチの外付けディスプレイでスキャナ保存に対応しています。もっとも、ペーパーレスを推進する事務所業務の生産性向上のため、ノートパソコンのディスプレイでは大きさが足りないので、大型の外付けディスプレイを必要としました。
将来の税制改正では、ディスプレイ要件を緩和し、ノートパソコンのディスプレイサイズとして広く普及していると見受けられる「13インチ以上」として頂きたいと思う次第です。
(本投稿の法令解釈および意見に係る部分は、執筆時点(2022.1.6)における当事務所の私見に基づいております。具体的にスキャナ保存の要件を充足するかどうかは、個別に税理士にご相談頂いた上で、判断されますようお願い申し上げます。)