ちきりんの最新刊を読んで

ビジネス書として読んで、印象に残ったこと

ちきりん「徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと」(ダイヤモンド社)を、読了しました。

ちきりんさんの本は愛読しており、以前にもブログで触れたことがあります。

リノベについて関心があって、知りたいから本書を手にとったわけではありません(もしリノベに関心があれば、類書を数冊購入し、読み比べるところです)。ちきりんさんの最新の知見に興味があったからです。アマゾンのレビューにも「リノベ業界をケースとしたビジネス本」とあり、ビジネス書として新しい考え方や学びが得られることを楽しみに手に取りました(KindleアプリにダウンロードしてiPhoneで読みましたが、手に取るという点では紙の本と同じですね)。

「取引の2類型」のくだりでは、会計事務所業務はどっちだろうと考えてみた。

特に興味深く拝読したのは、世の中の取引の2類型のところでした。それは、

  • (売り手と買い手の間での)等価交換取引
  • (売り手と買い手の)共同プロジェクト型取引

の2類型であり、リノベは後者が該当すると主張されていました。

ちきりんさんの筆運びは、読み手に様々なケースを想像させるところに、その特徴があると私は思っていますが、ここを読みすすめて、スーパー、ドラッグストア、コンビニ、チェーンのカフェや飲食店の買い物は「等価交換取引」かなと思ったり、

ヨガのクラスやランニングのレッスン、小笠原で経験したようなドルフィンスイムやSUPのツアーは「共同プロジェクト型取引」にあたるかなと思いました。こうしたレッスンやツアーは、単に知識やノウハウを伝授されて終了ではなく、顧客(私)自らエクササイズしたり、行動や感動をともにしたりして、インストラクターやガイドさんと一緒にひとつの経験や記憶(思い出)を完成させるものだから、共同プロジェクトといえます。この点では、ゲストハウスやユースホステルでの宿泊、演劇や、音楽のライブ、映画にも同じことが言えそうです。

さらに、物品の販売であっても、(チェーン店ではない)カフェやコーヒースタンドにおけるロースターさんやバリスタさんとの取引は「等価交換取引」でありつつ「共同プロジェクト型取引」の要素を多分に含むと思いました。ロースターさんやバリスタさんがつくる、ないしつくろうとする「(お店の)世界観」「空気感」を、顧客と共有・シェアするという要素が強い、顧客もまた(お店の)世界観に共感して、店の一部をつくるものと考えられるからです。

そして、会計士や税理士の業務(会計事務所業務)はどちらに該当するか、考えることになりました。

私は、会計事務所の業務は共同プロジェクト型取引に該当すると考えます。その理由としては、まず、医療や教育サービスと同じで、クライアントの協力がなければ、会計・税務という仕事が完結しないからです。

会計税務の専門家として、有用なアドバイスや妥当な会計・税務上の判断をクライアントのためにするためには、クライアントの情報を必要としますが、必要な情報はクライアントに聞いたり、資料をご用意頂いたりしなければ分かりません。この点で、会計事務所が仕事を遂行するためにはクライアントの協力が欠かせず、会計事務所業務は会計事務所とクライアントとの共同プロジェクトといえます。

単発の税務相談や税務申告書の作成はややもすると「等価交換取引」と捉える向きもあるかもしれません。しかし、税務相談も税務申告書も、クライアントのビジネス等の固有の知識がなければ、妥当な判断ができず、固有の知識を得るための会計事務所側の問い合わせや質問にお答え頂くという協力を得ることが欠かせず、この点でも共同プロジェクト型取引と言えます。

そして、会計・税務は、個人事業主であれ会社であれ、企業経営の根幹・重要部分の一つです。重要部分にかかわる会計税務の専門家としては、クライアントのビジネスの成功・繁栄はとても嬉しいものであり、クライアントの成功を嬉しく思うという「気持ちの共有」という点からもやはり「共同プロジェクト型取引」といえます(その点でも公認会計士や税理士はやはり「医師」にとてもよく似ていると考えます。医師にとっても、自分の患者の病気や怪我からの回復は自分のことのように嬉しいと感じると思いますから)。

ここまで、考えたことを書いてまいりました。思考する良いきっかけを与えてくださるちきりんさん、これからも愛読し、もっと考えて、行動していきます。

(本投稿の執筆時間 80分)

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