計と計を会わせるから「会計」
現物の計を帳簿に反映させるという基本
会計(経理)は、現金や預金をはじめとする企業の財産の動きや、決算日のような一時点での状態を表現するものです。
財産の動きや状態が反映されているからこそ、会計(およびその集計結果である決算書)が信用され、融資の判断に用いられたり、税金を適切に計算できたり、そもそも経営判断を的確に行い得るのです。
商売によって提供するモノやサービスの品質や満足度も信用を創造するものですが、商売の動きを記録した会計(決算書)もまた、信用を創造するツールといえます。
そう考えると、会計を会計事務所や記帳代行業者に丸投げすることなく、自社で、自分で理解しながら会計をやっていくことが、信用の創造という意味でいかに大事かがわかるというものでは無いでしょうか。
毎日の現金のカウントという商売の基本は信用の基本でもある
例えば、パン屋さんでもカフェでも美容院でも歯科医師でも、「お店」をやっていく上では、提供したモノやサービスの対価として現金を授受することになります。
現金を毎日いくら受け取って、いくら支払って、営業時間が終了したあといくら残っているのか、こうしたことを記録していかなければ、現金が知らない間によくわからないところに行ってしまったり、紛失してしまったとしても気が付かなかったり、そもそも一日の売上金額とか一日の原価や経費があやふやになり、無駄があっても何が無駄になっているのか、よく分からなくなってしまいます。
会計ソフトへの入力や帳簿への記入といったことを面倒がるあまり、正確に入力や記入をしないいわゆる「どんぶり勘定」では、お店の安定的な運営、効率的な運営には限界があるのでは無いでしょうか。
また、取引相手に直接会計データや帳簿を見せないとしても、そうしたどんぶり勘定で店を運営していると、その店と取引する相手(例えばお店の大家さんとか、仕入先)にとってみれば「ちゃんと期日に満額を支払われないのでは無いか」と懸念を持たれてしまいかねないと言えます。
自分で商売をするということは誰かに雇われることとは決定的に異なり、自分で経営をするということ(商売=経営)。お金の出入りと残高を正確に毎日欠かさず記録することは経営そのものであり、信用力の源として、(はっきり言って)歯をくいしばってでもやらなければならないことです。しかし、やれば必ず、信用力という力になってきます。
キャッシュレスにしてみるのも一つの手だが、それでも計と計を会わせる必要が
最近は、現金を扱わず、売上代金を銀行振込にしてもらうとか、クレジット決済にしてもらうとか、電子マネーにしてもらうとか、現金をなるべく店頭で扱わない工夫が随所で見られるようになりました。Squareのように手間のあまりかからないクレジット決済もありますから、現金の管理がわずわらしい(現金は紛失するし、盗難の恐れもあるので管理は確かにわずわらしい)ならば、やってみない手はないと思います(当事務所では代金は全て銀行振込にして頂いていますが)。
それでも、クレジット決済の合計残高がいくらあって、いつ振り込まれるのかは、正確に把握して会計データとして登録しなければなりません(サービスやモノをお客様に提供した時点でいわゆる掛売上となる)。
また、預金口座に振り込まれた金額、預金口座からの出金金額、預金口座の残高も日々記録しなければなりません。もっとも、預金口座については、インターネットバンキングにして、その入出金データをクラウド会計ソフトにそのまま取り込んで(同期させて)、入力の手間を省くことはできます。
現金を日々カウントして記録するという手間は省けても、クレジット決済の残高と入金予定日の把握と記録、預金の入出金と残高の記録は欠かせず、何れにしても現物の計を記録する「会計」をしていくということです。
おわりに
記録を持っておくのは、紛失や盗難の予防と、紛失や盗難がいつ頃、どのように発生したかの手掛かりになります。
毎日、現金の残高と会計ソフト(データ)上の現金勘定の残高を照合していけば、ある日に現金の残高が会計ソフト上の残高を下回った(不足した)としても、その日のうちに何が起ったかを思い出しながら原因を調べられます。
昨日は合っていて、今日は合っていなかったのであれば、1日の間に何かが起こったと推定でき、不足した原因となる事象の発生時期を特定しやすい、ひいては(大昔に起こったことに比べれば)原因を特定しやすいといえます。
何らかのトラブルが発生したとしても、それにいち早く気がついて、素早く解決できれば、企業の対応力が十分にあるという信用力に繋がるといえます。
計と計を会わせる会計を毎日欠かさないことによって信用力を強化する、ということを念頭に置きましょう。
(本日の執筆時間 50分)