会計ソフトの摘要欄を書くコツ

摘要欄はなぜ必要か

会計ソフトには(紙の帳簿にも)「摘要」という欄があります。ここには、取引の概要を具体的かつ簡潔に書きます

なぜ摘要欄があるかというと、帳簿を見ただけで(詳細な資料といえる領収書、請求書、契約書などの証拠資料を見なくとも)どのような取引をしたかを分かるようにするためです。

また、取引に付される「勘定科目」というものは、大まかに取引の内容を分類するものであり、大まかに取引の内容を類推させるものではありますが、取引の具体的な内容までは分かりません。具体的な内容は、摘要欄に書いて説明する必要があるのです。

公認会計士の監査でも、税務調査でも、会計ソフト(で作成される帳簿)は必ず見られることとなります。そのときに摘要欄に記載が無かったり、不十分だったりすると、摘要欄を十分に書くよう指摘されることとなります(会計(経理)事務が雑だなというマイナスイメージも与えてしまい、損です)。私も業界に入りたてのころから、摘要欄の記載については、諸先輩方にならい、クライアントに指摘していました。

それでは、摘要欄にはいったいどのように書けばいいのか。特に会計ソフトの入力(記帳)にまだ慣れていない方にとっては、迷うことも多いでしょう。そこで、摘要欄を書くコツについてまとめてみました。

摘要欄を書くコツ

上の写真は、当事務所でも使用しているfreeeの画面です。パッと見て具体的な内容が簡単にわかる程度の記載です。新聞図書費の総勘定元帳を引っ張ってきたものですが、これをお手本にしてもいいでしょう。

さて、摘要欄に書く内容は次のとおりです。

  • 取引の相手の氏名や名称(誰と,who)→freeeでは「取引先」
  • 取引の内容物、売ったもの、買ったもの(何を,what)→freeeでは「品目」
  • 取引をした部門や部署や担当者(どの部門(の誰)が,where)→freeeでは「部門」、「メモタグ」も活用
  • 取引の理由(なぜ,why)→freeeでは「メモタグ」や「備考」欄を適宜活用

この4点については、略称でも構いません(略称の意味については、聞かれたら答える形で良いです)。この4点は5W1Hのうちの5Wといえます(なお、いつ(when)取引したかについては、日付欄に書くこととなる)

また、内容物(品目)については、総括的な名称を書くケースが多いと思います。例えば「書籍」「雑誌」「材料」「備品」「事務用品」といったぐあいです。これだけ書いても不可とはいえませんが、領収書や請求書まで見ないと具体的に分からないというのは、帳簿として不便といえます。

そこで、書籍や雑誌の名称(「日経おとなのOFF」といったぐあい)、材料の具体的な内容(「コーヒー豆 エチオピア」「黒砂糖」といったぐあい)、備品や事務用品の具体的な種類や名称(「延長こーど」「ボールペン」といったぐあい)を追加して書いていくのがベターといえます。freeeでは、備考欄に書いていけばよいでしょう。頻繁に買うものについては「品目」として登録したり「メモタグ」を追加してもいいでしょう。

摘要欄の情報検索を活用

さて、会計ソフトの便利な点としては、検索の容易さ、集計の容易さがあります。

備考欄の情報も、単語を入力して検索できます。freeeでは、取引先、品目、部門、メモタグごとに検索や集計(「レポート→集計表」など)ができます。

摘要欄の情報検索を活用すれば、勘定科目ごとの集計では分からない、より詳細な集計や、前期比較、前月との比較といった分析が可能になります。

例えば、売上高のうち、コーヒー豆とドリンクとフードと、様々な売上品目があるなかで、どの種類のコーヒー豆の売上が多かったか、たとえば、

品目「コーヒー豆」メモタグ「エチオピアイルガチェフェ」のように、

あるいは「コーヒー豆」「グアテマラウエウエテナンゴ」のように、

絞り込んで検索、集計ができます。

記録は詳細に細かくしたほうが、後に成果(売上や利益)を分析して原因をさぐるのに役に立ちます。細かく記録するのは最初は面倒に感じるでしょうが、慣れの問題といえます。

終わりに

確かに、摘要欄を書くのは会計監査や税務調査といった、会計ソフト(帳簿)を外部の者に見せるためということもありますが、それ以上に、自社ないし自店の経営状況を把握したり、経営の成果を分析したりするために書くものといえます。

摘要欄には長文は書き込めない上、帳簿を総括的に一覧できることも重要なので、取引の内容を具体的かつ端的に書ける必要があるのですが、そのように書けるまでには、試行錯誤も必要になります。

摘要欄をどう描くかも、経営の問題といえます。試行錯誤を重ねて、時には公認会計士や税理士などの専門家に相談しつつ、他者にとってのみならず、自社(経営者ご自身)にとって分かりやすい摘要欄を書いていきましょう。

(本投稿の執筆時間 85分)

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