青色申告にしない手はない~届出により生計をひとつにする家族への給料が必要経費として認められる
個人事業主としてお店を経営される方のなかには、ご家族の方に仕事をしてもらって給与を支給する方もいらっしゃると思います。所得税の計算においては、原則としては、ご家族の方への給与は、必要経費として認められません(所得税法56条)。
ここにいう「ご家族の方」とは個人事業主と「生計を一にする配偶者その他の親族」を意味します。この「生計を一にする」という言葉は、所得税の計算においてはよく出てくる用語で、ひとつのお財布を家族で共用しているというイメージでとらえられ、
同居していれば、生計を一にしているとみなされます
(明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除く)。
別居していても、
生活費、教育費や療養費を送金している場合
別居している家族が通っている学校や仕事が休みの際には、戻って同居する場合
には、生計を一にしているとみなされます。
以上をふまえてもう一度いうならば、
原則としては、生計を一にする配偶者その他の親族への給与は、必要経費として認められない
ということになります。
なお、生計を別にする(独立した家計を営んでいる)親族への給与は、必要経費として認められます。
さて、生計を一にするご家族への給与を、必要経費として認めてもらうための特例があります。
それが、青色申告の場合に認められる「青色事業専従者給与」です(所得税法57条)。
青色事業専従者給与として認めてもらうためには、まず、「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署に提出します。
この届出書の提出期限は、青色事業専従者給与を必要経費として認めてもらおうとする年の3月15日です。
ただし、事業を1月16日以後に開始した場合は、事業開始日から2か月以内
新たに専従者がいることとなった場合は、いることとなった日から2か月以内です。
この届出書の提出以外の、青色事業専従者給与を必要経費とする条件は以下の通りです。
(1)青色事業専従者に支払われた給与であること。ここで、青色事業専従者とは、青色申告者(である個人事業主)と生計を一にする配偶者その他の親族であり、その年の12月31日現在で15歳以上であり、専ら事業に従事(原則として従事期間がその年を通じて6月を超えていること)している者である。
(2)届出書に記載された方法、記載された金額の範囲内で支払われていること
(3)支払われた金額が労務の対価として相当である(筆者注・常識的に考えてふさわしい)と認められること。なお、過大とされる部分は必要経費として認められない
一方、白色申告の場合には、別の制度である「事業専従者控除」により、以下のいずれか低い金額を必要経費とみなすにとどまります。
(1)専従者ひとりあたり50万円(配偶者は86万円)
(2)その年分の専従者控除前の不動産、事業、山林所得の金額の合計額÷(専従者の数+1)
青色申告における「青色事業専従者給与」の方が、労働の対価である給与支給額を必要経費に算入でき、白色申告における事業専従者控除よりも一般的に必要経費算入金額が大きくなり、有利になります。
(本投稿の執筆時間 70分)