起業がスタートなら事業承継はゴール。ゴールをイメージする時間を持つ。
(神奈川県事業承継ネットワークが配布している事業承継の「課題発見・対策シート」)
経営者としてのゴールイメージをなるべく具体的に持つ
起業したばかりの方にとってはもちろん、企業を10年、20年と経営していても、経営者としてのゴール(引退時期。Exit(エグジット)と言ってもいい)をどのようにしたらよいか、いつをゴールとするか、問題として認識はしていても、なかなか決められない、なかなかイメージできない方も多いのではないでしょうか。
経営者としていつゴールするかというのは、営んでいる会社なりビジネスをどうするかということでもあり、決められないうちにいつの間にかゴール(縁起でもないことを書きますが、経営者の他界、廃業、倒産)してしまうことも考えられます。
「死ぬまで経営者をやる」という人もいらっしゃいます。しかしながら、経営という非常に高度な仕事を、頭の回転が鈍ったり、身体も思うように動かなくなったりしても、満足にできるものなのでしょうか。
そうなってしまう前から、ずっと前から、ゴールのイメージを作っておいたほうが、そのイメージにたどり着きやすくなるのではないでしょうか。
ゴールイメージから逆算して計画。会社を、後継者を、そして自分の残された人生の時間を。
ここは「死ぬまで経営者をやる」と抽象的に思い込む代わりに、なるべく具体的に、どのようなスタイルで、どのようなタイミングで、資金はどのくらいで、どのような人とかかわりながら、経営者としてのゴールラインを超えていくのか、訓練しつつイメージしていくようにしたほうが良いと思います。
フルマラソンに似ています。ゴールした瞬間を具体的に、私の場合は、両手を上げてガッツポーズしながらゴールして、受け取った完走メダルにキスをして、首にかけてもらって記念撮影してもらうというイメージを持っています。
このイメージを具体的にするために、5kmごとのペース配分とか、給水所における補給の計画を立てて、当日の朝のスケジュール、前日のスケジュール、前日までのトレーニングのスケジュールを立てて、実行していきます。
マラソンに限らないですが、トライアスロンでも自転車でもゴルフでもテニスでも、スポーツで目標タイムや目標スコアを達成するために、逆算してどうするかを決めていくのです。ビジネスも同じです。
そして、ゴール後にどうするか、資金の工面方法も含めて考えておきます。
次のビジネスを立ち上げる、趣味に没頭する、ボランティア活動に参加するなど、ゴールの先の様々な選択肢をイメージしておきます。
事業承継というゴールにどうやってたどり着くか
経営している会社を上場させることは、多くの経営者が夢見るゴールですが、上場しない場合には事業を次の世代に引き継ぐこと、すなわち事業承継がゴールの一つになります。
事業を次の世代に引き継ぐには後継者が必要ですが、後継者をどう選んでいくかを考える必要があります。パターンとしては3つ。
- 子、その他の親族を後継者に
- 親族ではない経営幹部(社内の、役員や従業員)を後継者に
- 親族でも経営幹部でもない、外部の第三者に会社を売却する(M&A)
親族を後継者にする場合は、株式の贈与や相続が問題になってきます。贈与や相続が問題になるということは、経営者が所有する他の個人財産についてもどう相続させるかを検討することになります。
親族以外の経営幹部を後継者にする場合には、通常は株式を経営幹部に売却することになりますが、経営幹部にとっては株式購入資金をどう蓄えたり調達するか検討することになります。
外部の第三者に会社を売却する場合には、そもそも売却先となる会社や個人事業主を探して、マッチングを図る必要があります。M&A後の経営がうまく回るかどうかを意識して。
ゴールの状態をイメージして、そこに至るまでの
- 後継者の選抜
- 後継者の教育と実践
- 株式の承継タイミングと承継にあたっての税金や資金の検討
- そもそも、ゴールの会社の状態をどうしたいのか。規模は、売上高は、資産構成は、従業員のモチベーションは、ブランドイメージは?
- さらに、ゴールの会社の状態を、貸借対照表として数字でも描く。無借金経営にするか、設備投資を活発にして事業拡大に進むか、自己資本比率を上げるかなど、そして、その数字になるにはどうすればいいか。
これらをはっきりと、スケジュールしてイメージできるようになるように、書き起こし、書き直し、書き続け、公認会計士や税理士などの専門家に相談したりアドバイスを求めたりしながら、経営者としての考えをだんだんとまとめていきます。
そもそも経営という仕事自体が高度な思考力と強いバイタリティーを必要とする仕事ですが、その中には事業承継の検討も含まれています。思考停止に陥ることなく、長期に渡って考えに考えを重ねて結論を出していきます。
なかなか事業承継というゴールの具体的イメージが湧かない場合でも、思考し続けることが大切です。結論がなかなかでなくても、です。
思考停止が一番の敵と思って、経営課題の重要な一つであるゴール=事業承継を考え抜いて行きましょう。私もアドバイザーとして全身全霊でアドバイスいたします。
(本投稿の執筆時間 60分)