財務分析の基礎~損益分岐点分析

損益分岐点売上高とは、収益と費用がトントンすなわち、利益額ゼロとなる売上高をいい、売上高がこれを上回れば利益発生(黒字)となり、下回れば損失発生(赤字)となります。

損益分岐点分析とは、損益分岐点における売上高を基準に、売上高と総費用との関係から、売上高に応じた利益あるいは損失の発生額を明らかにする分析をいいます。

ここで、総費用というのは文字通り、費用の総額を意味しますが、総費用の構成要素は2つあります。変動費と固定費です。数式にすると、

総費用 = 変動費 + 固定費

となります。

固定費とは、売上高がゼロであっても発生する費用であり、売上高の増減にかかわりなく一定の額が発生する費用です。大雑把には、損益計算書における販管費、営業外費用が該当します(ここでは、経常的に発生するという性質を持たない「特別損失」は除いて考えます)。

変動費とは、売上高がゼロならばゼロであり、売上高の増減に比例して発生する費用です。大雑把には、損益計算書における売上原価が該当します。

(厳密には、固定費的な性質を持つ変動費(準変動費)とか、変動費的な性質を持つ固定費(準固定費)というものも存在しますが、単純化のため説明しません。また、販管費や営業外費用にも売上高に比例する費用項目も存在しますが、単純化のため説明しません。)

さて、売上高と総費用の関係については、次の式で表せます。

売上高 - 総費用 = 利益

売上高 - (変動費 + 固定費) = 利益

損益分岐点売上高とは、利益がゼロの場合の売上高なので、上の式で利益にゼロを入れると、

損益分岐点売上高 - (変動費 + 固定費) = 0

式を変形すると、

損益分岐点売上高 - 変動費 = 固定費

になります。ここで、売上高から変動費を差し引いた利益を、限界利益といいます。

損益分岐点においては、限界利益 = 固定費

となります。

企業活動においては、売上高から売上原価(=変動費)を差し引いた売上総利益(=粗利であり限界利益)で、固定費を回収することが肝心、ということになります。固定費を回収してなお利益が出るように、売上高を獲得していくことが必要になってきます。

目標は、努力すれば達成可能なところに設定するのが最も効果的といえます。この点で、限界利益と固定費を明らかにしつつ、損益分岐点を明確にすれば、やみくもに(合理的でないほどに)高い売上獲得の目標を立てるということもなくなるでしょう。目標がなぜその目標なのか、合理的に説明もできるでしょうし、変動費、固定費と分けて検討することにより、それぞれの費用の性質に応じたコストダウンの対策も立てられることになります。

そして、限界利益率についても説明します。限界利益率とは売上高にたいする限界利益の割合で、売上高-変動費=限界利益という関係にあることから、限界利益率と変動費率を足すと1(100%)になるという関係にあります。

100%-変動費率=限界利益率

となるわけです。また、

限界利益 / 売上高 =限界利益率 であることから、

限界利益 = 売上高 × 限界利益率 となり、損益分岐点においては、

固定費 = 限界利益 = 損益分岐点売上高 × 限界利益率 となり、

損益分岐点売上高 = 固定費 / 限界利益率

となります。固定費と限界利益率がわかれば(限界利益率は1-変動費率なので、変動費率(=売上原価率)がわかれば)、損益分岐点売上高を計算できる、ということです。

ここまで、損益分岐点分析の説明を数式を使ってしてまいりましたが、下のようなグラフにまとめることができます。数値例も以下のとおりです。

この図で、売上高線(黒い、右上に45度で伸びている線)と総費用線(赤い、左端が3,500から始まってゆるく右上に伸びている線)で囲まれた、2つの領域がポイントです。

一つは青でⒶと記した領域ですが、ここは、損益分岐点売上高を超えた部分であり、売上高が総費用を超え(固定費を回収しきって)利益が発生していることを意味します。

もう一つの領域は赤でⒷと記した領域で、ここは、損益分岐点売上高を下回った部分であり、総費用が売上高を上回ってしまい(固定費を回収しきれず)、損失(赤字)発生となっています。

この数値例では、売上高5,000のところで、総費用も5,000となり、

損益分岐点売上高5,000 = 固定費3,500 + 変動費1,500

変動費1,500 = 売上高5,000 ×変動費率30%

限界利益率 = 100% - 変動費率30% = 70%

固定費3,500 ÷ 限界利益率70% = 損益分岐点売上高5,000

と、数式に数値をあてはめるとこのようになります。

自社の損益分岐点がいくらか、変動費率と固定費はいくらかを調べ、把握しておくことは、重要といえます。ここも会計記録が生かされるところです。税金計算だけの記帳に終わらせず、自社の分析に使っていきましょう。

(本投稿の執筆時間 100分)

 

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