財務分析の基礎~原価率と粗利率
売上高-経費=利益と、おおざっぱにはこの算式が成り立つのですが、もう少し詳しくみていくと、経費は、売上原価、販売費および一般管理費、営業外費用、特別損失に分けられます。このほかにさらに、営業外収益と特別利益があります。そして、利益というのは段階があって、
- 売上高 - 売上原価 = 売上総利益(粗利、荒利ともいいます)
- 売上総利益 - 販売費および一般管理費(略して「販管費」) = 営業利益
- 営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 = 経常利益
- 経常利益 + 特別利益 - 特別損失 = 税引前当期純利益
- 税引前当期純利益 - 税金費用(当期に発生した法人税、住民税、事業税および法人税等調整額) = 当期純利益
となります(損益計算書とその表示項目の詳細については機会をあらためてお話しいたします)。
さて今回は、原価率と粗利率についてお話しします。
いずれも、売上高にたいする割合で、
- 原価率は売上高に占める売上原価の割合
- 粗利率は売上高に占める売上総利益(粗利)の割合
です。売上高が売上原価と売上総利益の合計であることから、原価率と粗利率の合計は100%になります。下図にまとめました。
売上原価は、売上と直接対応する経費であり、売上の対象となるモノやサービスそのものの購入価額で構成されます。
パン屋さんを例にとると、パンをつくるために直接必要な支出、たとえば材料である食材、製造するための電気代、水道代、ガス代、製造を担当する従業員の人件費が該当します。
この売上原価を、売上高から差し引いた残りが売上総利益となり、店の家賃や販売を担当する従業員の人件費、販売のための器具備品や会計ソフト代といった販管費や、支払利息などで構成される営業外費用のもと(原資)になります。
実際にモノやサービスを販売するにあたっては、売上原価を含めた経費に目標利益をプラスしたうえで、市場価格とか相場とか「いくらくらいなら売れそうか」も考慮しつつ、販売価格を決めていきますね。売れそうな販売価格が経費を下回れば、経費のどこかを削減、削除できないかを考えていくわけです。
粗利率が高ければ、かなり稼ぎの良いビジネス(稼ぎのよいモノないしサービス)といえ、粗利率が低ければそれなりの稼ぎのビジネスということになりますが、粗利率も前期比較や前々期との比較など過去からの趨勢を観察して、変動した原因を分析することが重要になってきます。
売上原価は、売上に直接対応するうえ、一般的には変動費、すなわち売上高に比例して発生するので、売上が増えているのに売上原価が減っている(逆の動き)とか、売上の動きに連動しないとかの状況であれば、何らかのイレギュラーな事態が貴社のビジネスに起こっているといえます。
すぐにピンとこないような大幅な変動や、不規則な変動については、原価率や粗利率の構成要素の動きまで深堀りして調べ、たとえばなぜ原価が大幅に増えたのかとか、原価は変わらないのに売上だけなぜ減ったのかとか、原因を調べ、対応策なり改善策を練って実行するわけです。
そして、原価率や粗利率は、目標(目標売上高や目標売上原価に基づいて計算した目標原価率と目標粗利率)との差も把握して、なぜこれだけの差がついたのか、調べて原因をつきとめて、改善していくことも重要です。
(本投稿の執筆時間 50分)