消費税の概略その2~原則課税と簡易課税
昨日に引き続き、消費税の概略について投稿します。
今回の消費税の概略のシリーズは、ざっくりと消費税の概略をお伝えすることを狙いとしているため、厳密な(消費税法上の)専門用語はなるべく使わず、また、個別論点には触れず制度の根幹部分のみに絞りこんで記述しています。
昨日は、
売上で預かった消費税-取引先に支払った(預けた)消費税=国(税務署)に納める消費税額
というところをお話ししました。
今日は、この式のうち「取引先に支払った(預けた)消費税」の計算方法について投稿します。
まず、下の図をご覧ください。
昨日の図の「取引先に支払った(預けた)消費税」の部分に加筆をしたものですが、原則は、取引先に支払った(預けた)消費税を集計する方法です。もう一つは特例として中小企業者に認められる方法で「簡易課税」と呼ばれるものです。ここで、中小企業者とは、
中小企業者=基準期間(個人事業主なら2年前、法人なら2事業年度前)の課税売上高(ここでは、消費税のかかる売上高、ととらえて大丈夫です)が5,000万円以下である個人事業主あるいは法人
をいいます。
そして、簡易課税によって計算し、申告・納税するためには、「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄の税務署に提出する必要があります。提出の期限は、簡易課税を適用する課税期間の前課税期間の末日までとなっています。すなわち、翌課税期間からは簡易課税にしますよ、という届出をするわけです(ここで、課税期間とは、原則としては個人事業主の暦年又は法人の事業年度です。)
さて、簡易課税によるならば、次の図のように、売上により預かった消費税から差し引く金額を計算します。パン屋さんを例にとります。
このように、簡易課税においては、取引先に支払った(預けた)消費税額の集計をしなくて済む(この意味で「簡易」)わけで、お客様から預かった消費税額の集計をし、それにみなし仕入率を乗じれば、仕入れに係る消費税額として控除できる額を計算できることになります。
みなし仕入率は、業種(日本標準産業分類に基づく)ごとに決まっており、
卸売業(第一種事業):90%
小売業(第二種事業):80%
製造業、建設業、農林漁業など(第三種事業):70%
その他の事業(飲食業など)(第四種事業):60%
金融保険業、運輸通信業、サービス業(飲食業除く)(第五種事業):50%
不動産業(第六種事業):40%
となっています。
簡易課税において、売上高に係る消費税を集計する際には、どの事業に係る売上に分類されるのか、特に複数の業種を営んでいる場合には、留意する必要があります。複数の業種を営んでいる場合のみなし仕入率の計算は複雑になってきます(本投稿では説明を省略します)。
さらに、簡易課税によった場合には、2年間は継続して簡易課税によって計算しなければなりません。簡易課税では、取引先に支払った消費税を集計しないので、適用が強制される2年間の間に設備投資で多額の消費税を取引先に払うような場合には、これを控除できないため、簡易課税では不利になることもあります。簡易課税を選択するにあたっては、選択しようとする年から2年間の設備投資の計画を明確にする必要があります。
簡易課税を止めるときには「消費税簡易課税制度選択不適用届出書」を、やめようとする課税期間の前課税期間の末日までに提出します。翌期から簡易課税をやめますよ(選択不適用にしますよ)という届出をするわけです。
(本投稿の執筆時間 92分)
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