肖像の価値が、誰にとっても重要な時代に
SNSやブログ、リアルの発信で注目を集める
私は、弁護士や弁理士ではないので、肖像権というものについて、専門的なことをなかなか書けません。しかしながら思うのは、SNSやブログで発信者の氏名と表情を公開しつつ発信する人が増え、そのなかには「インフルエンサー」となって社会(その範囲は、国際社会から国内社会、業界、地域社会と様々)に少なからぬ影響力を持ち、その肖像権(パブリシティ権)に潜在的な金銭的価値を有する人も出現しているのを感じます。
SNSやブログが普及していない時代には、個人が注目を集める手段は、テレビやラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアにほぼ限定されていました。「有名人=マスメディアに登場する人」という図式が成り立っていました。
ところが、現在は、SNSやブログの発信が注目される人もまた、有名人という図式が成り立ち得ます。もっとも、全世界に発信されるとしても、マスメディアのように広範囲に到達するとは限らないので、ネット上の発信で有名になるというのは、どこまで有名になるかという、範囲のレンジ、すなわち、一定の地域で有名なのか、一定の趣味を持つ者の間で有名なのか、一定の業界で有名なのかというレンジが生じうると言えます。
ネット上ではなくとも、たとえばチェーン店ではないカフェやコーヒースタンドのバリスタや、ファーマーズマーケットやマルシェに出店するチェーン店ではないお店のオーナーも、リアルでのパフォーマンス(所作)や接客といった露出によって、その豊かな個性とともに、顔と名前が広範囲に知れ渡ります。さらに、ネットで発信することで、その知名度を増幅させることができ、増幅された知名度が「顧客吸引力」となります。
ここでいう知名度というのは、その大きさよりも、他人の印象に残せるかどうかが問題といえます。
注目を集める努力の継続で、経済的価値が生まれる
ここでは、具体的な例としてバリスタや店主のお名前は(承諾を得ていないので)挙げませんが、私も、カフェでもベーカリーでもゲストハウスでも好きなお店やその店主とSNSでつながっていて、記事によく「いいね!」をします。
また、そのカフェの味や雰囲気が良い、そのベーカリーのパンがおいしい、そのゲストハウスのアメニティが素晴らしいという理由もありますが、そもそも「つくる人がその人だから」お金を支払って購入しています。
私みたいな人は、特に最近、少なくないと思います。
つくる人がその人だから、そのモノを買ったり、そのサービスを受ける。サービスや商品自体の価値もありますが、その人自体も顧客吸引力と、顧客吸引力から生じる経済的価値(この経済的価値を排他的に支配する権利が「パブリシティ権」)があるといえます。
この点、よく行くカフェのオーナーに最近、こうした経済的価値やパブリシティ権の重要性を認識されていたかどうかまでは分かりませんが、こう言われました。
「(高本さんも会計事務所として)ファンを増やしなさい」と。
その経済的価値は、金額単位ではありませんが、SNS上、バリスタや店主のフォロワー数(いいね!の数や「友達」の数)となって客観的に表現されています。
発信者は、ネット上でもリアルでも、発信を継続することで、「いいね!」を貯めていき、貯めた結果として、顧客吸引力を増し、それによって生じる経済的価値も増すといえます。
このオーナーさん(発信者)についた「いいね!」一つはいくらなんだろう?
発信者ごとに「いいね!」一単位の単価は異なると思いますが、こうした経済的価値の測定方法を念頭におくと発信者の持つパブリシティ権の金額をイメージできます。
金額の多寡にかかわらず経済的価値が生じれば、肖像権(パブリシティ権)を持つ。
発信者は、自分の提供するサービス(サービスと書いているが、歌や写真や絵やパフォーマンスのような、あらゆる芸術も含む)の対価とは独立した、自分自身の顧客吸引力から生じる経済的価値を念頭においてみると、それを侵害されないよう保護しようという活動につながり、それをもっと戦略的に活用しようという思考につながります。
もっとも、現状、会計上は「自己創設のれん」(「のれん」というのは、一言でいえば「看板」や「ブランド」の価値)の計上が認められません(主観的に価値を見積ることができても、客観的かつ合理的に価値を測定する手段がないから)。
それでも、肖像権(パブリシティ権)を主観的にでも金額的に意識して、自分をどう発信(露出)するか、戦略をたてて実行すると良いような気がします。
終わりに
ブログを始めて9カ月目に入っています。私もまた、公認会計士として、税理士として、個人として世界に向けて発信して、自己のパブリシティ権を高めたいと、この投稿で意識を新たにしました。
最近はあご髭を実験的に生やしてみています。
(本投稿の執筆時間 80分)