複業で民泊をはじめた。所得税はどう?~確定申告における所得区分について

個人が民泊で得た利益(所得)については、所得税がかかります。ここで、民泊の利益が、所得税のどの所得区分に該当するかによって、所得税の確定申告における取り扱いが異なってきます。下図に概略をまとめました。

前提として、会社員が、自宅の空き部屋を民泊としてお客様に提供することとしています。

単なる空き室の賃貸あるいはこれに準ずる取引内容(図のケース1)は不動産所得とされ、単なる空き室の賃貸ではなくサービスの提供が主たる部分と判断されるならば(図のケース2)事業所得か雑所得とされます。

不動産所得にあたる場合には、民泊サービスで提供する部屋数がおおむね10室以上かどうか(事業的規模かどうかの基準にあてはまるか)により、確定申告上の取り扱いが異なり、おおむね10室以上であれば、青色申告を前提にすれば、青色申告特別控除65万円、青色事業専従者給与の必要経費算入(届出必要)を適用できます。そうでなければ、青色申告を前提にすれば、青色申告特別控除は10万円、青色申告専従者給与の適用はできません。とはいえ、事業的規模ではなくとも、不動産所得に該当すれば青色申告が可能なので、青色申告承認申請書を提出すれば、節税できるといえます。

図のケース2において、事業所得にあたるのか、それとも雑所得になるのかについては、事業と認められる程度の内容かどうかを判断することになります。事業と認められるならば事業所得、認められなければ雑所得となります。

事業と認められる程度の内容かどうかは、常識的に判断されますが、判例や国税不服審判所における裁決事例に基づき、次の要素を考慮して総合的に判断します。
①独立して営んでいること
②営利性・有償性があること
③継続性・反復性があること
④自己の危険と計算において遂行し得ること
⑤取引に要した精神的・肉体的労力の程度
⑥人的・物的設備の有無
⑦取引の目的
⑧取引をする者の職歴・社会的地位・生活状況

これらを考慮すると、空き部屋1室を民泊として提供する程度では、事業所得として認定するのは無理があり、雑所得として認定した方が無難と考えられます。もっとも、具体的にどの程度の資金や人員、設備を投入し、年間売上高や経費、利益がいくらかまで見た上で、事業所得に該当するのか、雑所得に該当するのか、判断すべきです。

来日する外国人観光客の増加と、宿泊施設の供給不足、シェアリングエコノミーや複業の盛り上がりにともなって、民泊は今後増えることが予想されます。民泊による利益(所得)の所得税法上の取り扱いについて、今後、国税庁から指針が出る可能性もあります。

私見として、複業の促進の観点から、所得区分の認定基準を明確化するのが望ましいと考えます。

※本投稿における意見にわたる部分は、当事務所の見解であり、すべての事実関係に一律に適用できることを保証するものではありません。個別の事例における判断は、税理士、弁護士等の専門家に、各別にご相談の上、対処頂けますようお願い申し上げます。

(本投稿の執筆時間 120分)

Follow me!