ファーマーズマーケットブームとお金2.0

はじめに

今話題の「お金2.0」を一読しました。国が発行・管理する「貨幣」を媒介とする経済だけではなく、幾種類もの「仮想通貨」を媒介とする、貨幣経済とは異なる経済が併存する社会が到来しているのを感じます。

高度経済成長期を過ぎて40年強、モノがあふれ物欲が充足され、精神的な満足を求める(スピリチュアルな満足を求めるといっても良い)経済が主流になっているというのは、異論をはさまないところだと思います。

さて、今日の標題を「ファーマーズマーケットブームとお金2.0」としたのは、ファーマーズマーケットというところには、既存の、貨幣経済資本主義が想定するところの貨幣価値を超える、貨幣では換算できない価値があるから、またファーマーズマーケットがブームになっているのは、そうした価値を重視する人が増えていることの現れだと考えたからです。

著者の佐藤航陽さんは貨幣価値を超えるところの価値でも経済が動いていくということで「価値主義」を提唱していますが、ファーマーズマーケットはまさに「価値主義」で動いているからこそブームになっているといえます。

人が人を呼ぶ「仕組み」を創造できる者が勝利する

ファーマーズマーケットは、人が人を呼ぶ仕組みといえます。外観のクラフト感あるおしゃれさ、販売されているものの香り、味、手触り、珈琲のドリップのサウンドやバンドの演奏など、五感がいい感じに満たされ、自尊心をも高まり得る「装置」といえます。

お金2.0では、経営に成功している企業などの組織でも、マーケットなどの経済圏であっても、人が人を呼び、成功し続ける仕組みの要件として次の5つを列挙しています。

  1. 報酬(体系)お金だけではなく、楽しい、嬉しい、やりがいといったポジティブな感情を得られることを含む
  2. 変動のあること 構成員の入れ替わりがあり、型にはまらない
  3. 不確実性のあること(努力だけでも運だけでもうまくはいかない、先行きが読み切れない、ハプニングがある)
  4. ヒエラルキー(序列)があること
  5. コミュニケーションがあること

ファーマーズマーケットというのは、このすべての要件を満たしています。

報酬という点で、出店者にとっては売上を獲得でき、来場者にとっては代金と引き換えによそではなかなか手に入らないような、こだわりの逸品が手に入る、運営者にとっては、出店料等の収入もあれば、やりがいと楽しさがある。

変動という点では、毎回出店者が同じとは限らず、多くの場合入れ替えがあり、店のバリエーションを楽しめること、出店者にとっては出店すること自体、競争となっていること。

不確実性という点では、売上が読み切れるとは限らず、天候にも左右され、出会う人によっては思わぬ展開があること、

ヒエラルキーという点では、前述した「出店すること自体の競争」もあるが、店の行列など、店同士の「目に見える」売上獲得競争や、InstagramなどSNSにどの程度露出するかの競争がある。

最後のコミュニケーション、これが最も重要かも知れないが、来場者とお店とが顔の見える関係性で、話が盛り上がったり、出店者どうしでも話ができて、コラボが生まれたりすること。

以上のとおり、ファーマーズマーケットは、人が人を呼ぶ仕組みとして見事に成立しています。もちろん、これらの要件を十分に充足する具体的アクションが求められるわけですが「仕組み」を知る上で、ファーマーズマーケットに行って得るべきものは多いといえます。

好きなことに熱中する個性的な人がファンを獲得しながら勝利する

ファーマーズマーケットに出店するお店、農家さん、みんなとても楽しんでいます。

そしてなにより個性的で、こだわりをもっています。

規格大量生産される「コモディティ」とは反対で、その人にしか作れず、数量に限りもあります。

環境への配慮をしている店も多く、土づくりにこだわりをもっていたり、有機無農薬だったり、加工食品では添加物をゼロにしたりといろいろです。

食べる人の健康と幸せをしっかり考えているという点で、人にやさしいという点は多くの店が持っています。

ステージのあるファーマーズマーケットでは、出演者が地元のインディーズだったりしてこれがとても何気に聴き入ってしまうサウンドだったりします。

さて、出店者は、普段はお店を構えていたり、普段はお店を持っていなくてファーマーズマーケットのみの展開だったり、キッチンカーだったりと様々ですが、モノづくりに熱中していること、お客様との会話を楽しんでいることは強く感じます。対価として支払う貨幣分の価値を超える価値(なかでも応援したいと思う気持ち)が感じられるのは私だけではないと思います。

ストリートミュージシャンに思わず投げ銭をする人の心理に似ていて、(実際の投げ銭ではないですが)類似の規格大量生産品より高くとも、応援の意味を込めて買いたいと思って買います。

さらには、お店の外観や商品を、Instagramにアップしたりしながら、いいね!を増やしたりフォロワーを増やしたりと、お店自体がInstagramをやっている場合も、お客さんがInstagramをする場合も、拡散してファンが増えます。

こうして、お店にファンが増え、そのお店で買いたいという動機とともにファーマーズマーケットに足を繰り返し運ぶようになります。

お金2.0では「ファンの獲得の重要性」「ファンを失うことの恐怖はお金を失うことよりも恐怖である」と展開されていました。ファンがお店を支えて、ファンとお店とあいまってファーマーズマーケットを支え、結果としてお店も、ファーマーズマーケットも勝利します。

まとめ

ファーマーズマーケットが、価値主義経済を体現している場であり、ファーマーズマーケットという仕組みをつくる者と、個性的で、好きなことに熱中しながらファンを獲得する出展者とのいずれも価値主義経済においては勝利する、ということを述べてきました。

マーケットを創造するという観点では、コーヒーフェスティバルやクラフトビールのフェスにも当てはまります。野外の音楽フェスも当てはまると思われます。

川崎市でも武蔵小杉駅などで小さなマルシェが開催されていますが、3月3日(土)にはKawasaki Farmers Marketが開催されます。

Kawasaki Farmers Marketについてくわしくはこちら→Kawasaki Farmars Market20180303

このムーブメント、加速していくことでしょう。

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(昨年11月4・5日に柿生・麻生水処理センターで開催されたVege & Fork Market)

(本投稿の執筆時間 85分)

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