アルテリッカは成功事例、しかし通過点、麻生はまだまだこれから

2月10日(土)アルテリッカしんゆり10周年を記念した、公開シンポジウムに行ってきました。

アルテリッカは街の一つの構成要素としての成功事例

次のGWに開催されるアルテリッカしんゆりが第10回目となります。

クラシック、ジャズ、オペラ、演劇、能、狂言、落語、和太鼓など、世界と日本の、伝統的、高尚な芸術を、GWという一定の期間に集中的に楽しめるという点で、日本有数のイベントであると総括。

新百合ヶ丘駅周辺の徒歩圏だけでも、

  • 川崎市アートセンター
  • 麻生市民館大ホール
  • 新百合21ホール
  • 昭和音楽大学スタジオ・リリエ
  • 昭和音楽大学ユリホール
  • 昭和音楽大学テアトロ・ジーリオ・ショウワ

以上、6つもホールがあります。これらのホールを有効に、かつ同時多発的に関連づけて活用し、アルテリッカという一連のイベントを開催できている点で、確かに全国的に注目されるべきものを持っていると感じます。

そして、私が最も成功しているなと感じるのは、シンポジウムでも高く評価していた、ボランティアの数と質です。

私も、毎年ではありませんがボランティアとして参加したことがあります。初期の頃、2010年(確か)、事務所を麻生区に構えた後の2015年と2016年。上の写真のグラフが示す通り、初期の頃はボランティアは少なかったですが、2015年と2016年には、ボランティアが随分増えたなと感じました。

そして、ボランティアの熱意と楽しげなオーラとホスピタリティーについては、初期の頃にもありましたが、近年は増幅しているなと感じています。自分の活躍できる場所、能力・才能を発揮できる場所を見つけて、そこで花を咲かせているような、そういう印象を受けます。

ボランティアが、それぞれの能力と熱意を生かして、アルテリッカを支えていることこそ、アルテリッカの最大の成功要因にして、かつ、地域おこしとしても一つの成功要因となっているのは確かです。

しかし、アルテリッカは、GWという一時期に行われる、一つの街のイベントであって、街の構成要素の一つに過ぎないことも確かです。アルテリッカの成功に安住はできません。

ボランティアにしても、2年前の知見ですが、シニア層が多く、私(当時42歳)よりも若年のボランティアはまだまだ少ない状況です。たとえ短時間、ボランティアの総従事時間が1時間だけだとしても、U45の若年ボランティアにいかに参加してもらうかが課題です。年齢層的にも多様性が必要に感じます。

提起された次の課題「つながり」「幸福感」

シンポジウムでも、川崎市の目指すところ「ともにつくる 最幸のまち かわさき」が提起されました。コミュニティーの存在と、「つながり」、これらの機能による「幸福感」です。

アメリカの都市学者のジェイコブスさん(だったと記憶します)が「街の本質は見知らぬ他人どうしのゆるやかな関係性にある」としているのを、以前、何かの本で見ました。

街に生きるひととひととが、互いに無関係ではなく、小さいものであっても一種の「心地よさ」を感じるように街をつくっていくことのように、私には思えました。

アルテリッカに関しては、この点、今後も多様なボランティアを受け入れて、ボランティアの個性や強みを、適材適所に、活かしあっていくことを提起していました。

街づくり全般においても、是非ともアルテリッカの事例にならって、多様な人が参加する仕組みをつくる必要があります。

さて、私は、まだまだ麻生区という地域を「東京よりも東京らしい」と感じることがあります。

もちろん、麻生区は神奈川県のなかにある一つの地方の街ですが、これはどういう意味かというと、東京の丸の内、大手町、霞が関といった、ビジネス街ないし官庁街のドライな人間関係(ないしビジネス外の無関係さ)や、ビルのコンクリートのような無機質さというか没個性性が、(本来は豊かな農山漁村を持つような、ないしは里山の田舎である)麻生区にまだまだ再現されていると感じるからです。

さらには、東京都にある街の方が、麻生区よりもローカリティー(ローカル・地域の個性とか、ひととひととのつながり)が強いように感じ、東京都のほうが東京らしくなく地方っぽいと言えるのではないかと感じます。世田谷、杉並、渋谷、新宿、港、中央、墨田、台東、江東、足立、葛飾など23区然り、調布市や武蔵野市、立川市や八王子市のほうが、東京都なのに東京らしくないもの〜その地方の個性、ローカリティー〜を持っています。

麻生区にも、多様で多彩で多才な人がたくさん住み(直近の統計で人口17万7千人!)、麻生区に仕事をしに来る人も少なくないはずです。今後は、地域が持つ人的資源を地域でさらに発揮できる仕組みをつくりだして、街全体として個性的になって、ローカリティーを高めていくのが、課題に感じています。

追加したいさらなる課題「コラボレーション」「国際交流と国内他地域との交流」

その、麻生区のローカリティーを高める要素の一つに「食文化」があると思っています。

人口規模の割には飲食店が少ないと言われる麻生区ですが、例えば、麻生界隈の飲食店がコラボレーションして麻生ならではの郷土料理を開発したり(禅寺丸柿、万福寺人参、のらぼう菜といった特有の農産物もありますね)、現在は年1回のしんゆりマルシェの開催頻度を増やして、シーズンごとにするとか毎月にするとか。

食文化も芸術文化のひとつなので、アルテリッカやしんゆり映画祭と地元の飲食店ないし食の仕掛け人がコラボレーションをするのも、期待されます。

そして、国際交流、国内他地域との交流も、麻生区として活発にして、相互交流による新たな化学反応を起こしていくことが期待されます。

国際交流といえば、昨年GWの逗子海岸映画祭で「Play with the earth」という作品を観て印象に残ったのですが、鎌倉のお惣菜店「オイチイチ」がスペイン・バスク地方の美食倶楽部でお料理を提供することによる国際民間交流を図っているとのこと。

麻生と同じ神奈川県の鎌倉・逗子・葉山地域は、文化の発信力の強い地域と思っていますが、麻生としても、国際民間交流がもっと進むと非常に面白いものが生まれるのではないか。

また、一昨年のしんゆりマルシェから、マルシェに参加している長野県高森町(南信州にある市田柿の産地で、市田柿や柿の加工食品を販売した)。お互いに柿をモチーフにしたゆるキャラ(高森町は「柿丸くん」麻生区は「かきまるくん」)どうし、さらに交流を深めていくことも期待されます。

さらには、しんゆりマルシェを開催するにあたり参考にしたとされる(詳細はこちら)仙台市泉区の泉マルシェとコラボレーションしたり、仙台市泉区との交流をしていくのも一案と思います。

アルテリッカは確かに成功事例であり、地元民の誇りの一つです。しかし、これに満足せず、さらに前に進んでいきたいものです。私も麻生区に生きる者として、できることは(現在も、事務所を置いているほか、アサツナと里山ボランティアと大学の地元OBOG会に携わっていますが)やりたいと思っています。

(本投稿の執筆時間 95分)

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